2020/03/23
柔道整復師とは

柔道整復師の需要って実際どう?業界の将来性について調査

柔道整復師 将来性

最近、町で車や電車に乗っているとたくさんの接骨院や整形外科の看板を見かけるようになりました。なかには道路を挟んで接骨院が向かい合っている場合や、数十メートルと開かない距離に並んで開業していることさえあります。

そんな様子をみて率直に「よくあの距離に開業したな…どちらか潰れてしまわないのかな?」と思う方も少なくないでしょう。では、このような状況が柔道整復師の現状、そして将来をどう表しているのか、次項から順を追ってご説明していきます。

柔道整復師業界の現状

現在の柔道整復師業界をみると、毎年4000人以上の国家試験合格者が誕生し、柔道整復師となります。そして多くの柔道整復師は接骨院や整形外科のリハビリ室などに勤務しています。また、近頃では柔道整復師の資格を活かし、介護福祉施設やスポーツ施設へ出向いて活動をする柔道整復師も必要とされています。

求人事情と人手不足の現状

では、そんな柔道整復師の求人事情はどのようになっているのでしょうか。柔道整復師養成学校を卒業見込みの学生であれば、学校に数多くの求人が来ていますので、その中から自分の条件に合った職場を見つけることもできます。また転職を考えている方であれば、ハローワークやインターネットでの求人、最近ではフェイスブックなどのSNS上でも求人情報を見つけることができます。
そして採用事情ですが、これは人手不足の現状と密接に関係しています。というのは、採用されるのは難しくない場合が多いので、就職希望者にも採用側にとっても良いのですが、勤務条件による転職や独立などを目指しての離職も増えてきている傾向があるため、雇用する側の視点でみると人手不足という事が言えます。
しかし、先に述べたように毎年多くの柔道整復師が誕生していることを考えると、なんとも不思議に感じられる現状です。

有資格者と施術所数は増加傾向

それでは、現在柔道整復師免許を取得している有資格者はどれだけいるのでしょうか。
まず、平成10年の時点では全国に14校しかなかった柔道整復師養成校は、同年の規制緩和により徐々に増加し始め、平均して1年毎に10校前後増え続けた結果、平成27年には全国に109校にまで増えたという背景があります。
そして平成31年に厚生労働省が発表した第27回(平成31年3月実施)柔道整復師国家試験の合格者は4,054人で、前年に発表されている衛生行政報告例にある柔道整復師の就業国家資格者数73,017人と併せると約77,000人の就業可能な柔道整復師がいることになります。
また、増加傾向にある施術所数を見てみると、平成28年には48,024か所だったのが、平成30年には約2,000か所増え50,077か所となっています。

求人・採用事情

前項では、一見すると業界としては飽和状態で就職先などどこにもないように感じられさえする数字をご紹介しましたが、実際のところ柔道整復師の求人・採用事情はどうなのでしょうか。

求人情報からみてみると、接骨院や整形外科といった従来からある求人先に加え、デイサービスや特別養護老人ホームなど介護福祉施設からの求人もみられます。その中でどの職場の求人が増加傾向なのかをみていくと、やはり高齢化社会の影響を受けて、機能訓練指導員としての役割を柔道整復師に求める動きがあるので、介護福祉施設からの求人がだんだんと増加しています。

しかし、接骨院や整形外科からの求人もなくなったわけではないので、依然として多くの柔道整復師が活躍できる職場であることに変わりはありません。

柔道整復師の将来性は明るい!その理由とは

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これについては業界内外から色々な声が上がっています。将来性が無いという声も一理あるのですが、柔道整復師の立場を広く考えたとき、柔道整復師の将来性は今後も高いといえると思います。その理由を以下にご紹介します。

健康・ダイエットブームの再来

特に女性たちの間では新しいブームとは言えませんが、世の中の女性たちの多くは常に健康やダイエットに対して高い意識を持ってるという背景があります。なので、健康やダイエットというのはブームを超えてもはや女性の文化と言っても過言ではないでしょう。

そんな女性たちの間でヨガやピラティス、美しいボディーラインを目指すためのパーソナルトレーニングなども人気が高まってきています。そのような健康な体、または美しい体を手に入れる際に、体のスペシャリストである柔道整復師の知識を活かしたトレーニングやストレッチのアドバイスが求められるようになってきています。

また、最近では体を痛めてしまう前の予防に力を入れようとする考えも世間に浸透しつつあるため、この方面での活躍は今後ますます増えていくと考えられます。

幅広いキャリアを目指せる

ではここで、柔道整復師としてどのような職場でキャリアを積むことができるのかまとめてみましょう。

1.接骨院

接骨院は、柔道整復師が最も柔道整復師としての力を発揮できる職場だと思います。

理由としては、捻挫、打撲、肉離れなど医師の指示や許可を得なくても施術可能な症状の患者様が多く来院され、施術中の患者さんとの距離も近く、懇切丁寧な対応や患部に対する細かな施術、テーピングなどの技術を学ぶには接骨院が適していると言えます。

また就職する職場によっては整形外科と連携の取れた接骨院もあるため、骨折や脱臼などの重症例も整復し、経過観察できるチャンスがあります。

2.整形外科

整形外科に就職した場合、骨折や脱臼、手術適応になるような重症例を目にする機会は接骨院よりも多いでしょう。

しかし、職場によっては急性外傷を扱うことが少なく、捻挫や肉離れなどの急性外傷に対して細かい施術を行うというよりは、理学療法士と共に医師からの指示のもと、ほとんどリハビリを行うだけということも少なくありません。

もちろん柔道整復師でも急性外傷の対応をさせてもらえる職場もありますので、あらかじめその病院の特徴を調べておく必要があります。

3.介護福祉施設

デイサービスなどの利用者に対して、機能訓練指導員としてリハビリを行います。リハビリの対象者が主に高齢者となるため、急性外傷を扱う機会はかなり少なく、慢性的な症状改善のために各関節の可動域訓練などを行います。

4.スポーツトレーナー

最近では柔道整復師の資格を活かして個人のスポーツ選手やチーム(会社)と契約し、スポーツトレーナーとして活動している柔道整復師も数多くいます。この場合、自身のスポーツ経験が豊富にある、またはパーソナルトレーナーの資格を所有している事で、怪我に対する対応のみならず、専門性の高いトレーニングやセルフケアのアドバイスをすることも可能になります。

5.教員

国家試験合格後、在学していた専門学校と提携している整形外科に勤務し、その後母校に教員として就職し、後進の教育にあたるというケースもあります。受け持つ科目によって違いはあれど、深い知識と経験をもとに教鞭をとる必要があるので、免許取得後に一定の実績を積んでから目指すことが一般的です。

高齢化による需要増

現在、すでに高齢化社会といわれていますが、この先に待っているのは超高齢化社会です。今でも、デイサービスや介護福祉施設を利用したくても利用できずに困っている高齢者が多くいる現状ですが、このような状況は今後さらに加速していくことが考えられます。

こういった現状の中で、柔道整復師が機能訓練指導員として介護福祉施設からだけでなく、個人からも今後ますます必要とされることは想像に難しくありません。

一昔前までのように、「柔道整復師=接骨院・整形外科で働く人」というのではなく、時代背景を踏まえたニーズに柔軟に応えていくことも柔道整復師として求められていくようになるでしょう。そのためには、接骨院の中では保険で扱うことのない高齢者の慢性症状に対しての知識や技術を身に着けておくことが要求されます。

将来性ある柔道整復師が「やめたほうがいい」といわれる理由

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将来性が高いはずの柔道整復師ですが、一方では「柔道整復師はやめたほうがいい」との声もないわけではありません。ではなぜそのような声が聞かれるのでしょうか。柔道整復師業界の実際とともにお伝えしたいと思います。

柔道整復師のデメリット

①開業しても競合が多すぎる
②健康保険の取扱い(保険請求)が難しくなっている
③「柔道整復師」でなくても活躍できるようになってきている

などが分かりやすいデメリットになります。

①はとてもシンプルで、柔道整復師は開業権があるため、独立開業を目指す人も多いですが、接骨院の他にも整形外科、鍼灸院、整体、カイロプラクティックなど多くの競合があり、それらを合わせると、コンビニよりも施術や治療を受ける施設の方が多いと言われています。更に毎年数千人ずつ増える有資格者がいるため、生き残っていくのは簡単ではありません。

②に関してはニュースで取り上げられることも少なくないことですが、健康保険適応症状をしっかりと理解しておかないと「不正請求」にもつながってしまう場合があります。高齢化が進み、健康保険適応症状の患者が減少すると、今後接骨院では保険請求がどんどん困難になり、少しでも疑義のある療養費支給申請書(レセプト)があれば、行政からの指導も受けやすくなります。

③今までにお話した内容で、柔道整復師の活躍の幅が広がっているとお伝えしましたが、見方を変えれば「柔道整復師でなければならない分野以外」に活動の場を求めているということにもなります。そうした時に、3年以上の時間と多くの費用をかけてまで柔道整復師にならなけらばいけないのかしっかりと考える必要もあります。

柔道整復師になって将来後悔する人の特徴

ひとつだけ挙げるとすれば、「どうしても柔道整復師になりたい!」と思わなかったけど、なんとなく柔道整復師になってしまった人は必ず後悔すると思います。

柔道整復師の仕事は常に患者さんと接しています。そしてその患者さんはみなさん痛みや辛い症状を抱えて困っている方たちばかりです。そのような患者さんと向き合っていくのは簡単ではありません。そんな時に「なんとなく柔道整復師がいいな」「柔道整復師は将来性がありそうだな」だけで柔道整復師になった人たちには患者さんの痛みや悩みを解消してあげられないことはもちろん、メンタル面までケアをすることが難しいので、一生の仕事として継続していくのは困難でしょう。

ですので、それを回避するためには当たり前のことですが、「〇〇〇な症状を治せる人になりたい!」「怪我で困っている人の痛みをとって社会貢献したい」など柔道整復師を志すブレない動機を明確に持ち続けることが柔道整復師になって後悔しないための大切なポイントと言えます。

将来稼げる柔道整復師になるには?

ここまでの話を踏まえて考えていくと、整形外科や接骨院に勤務しているだけでは充分な稼ぎを得られるとは言えません。しっかりとした稼ぎを得るにはまず独立開業を目指す事が前提となってきます。そのうえで、複数の要素を併せ持っておくと安定した収益につながりやすくなるでしょう。

例えば接骨院を開業した場合でも、健康保険だけに頼っていては、全くと言っていいほど稼ぐ事は出来ません。その理由は先にも述べたように、現在でも健康保険適応の範囲が狭められていますが、この先は今以上に健康保険の取り扱いが困難になるかもしれないという話は業界内では当たり前のようにされています。

ですから、他院と比較して患者さんから自費をもらえるようなメニューを組めるだけのスキルを身につけておく事が安定的に接骨院を経営していくために必須といえます。

また、更なる高収入を目指し尚且つこの業界で生き残りたいならば、多店舗展開はもちろん今の時代に合ったYouTubeなどで情報を発信しながら自院をブランディングしていくことも収入の増加や柔道整復師の将来性を高めることにつながっていきます。

まとめ

では、今回お話しした柔道整復師の将来性についてまとめてみましょう。

・有資格者や施術所は増加傾向にあるが、就職においては従来と比較して様々な選択肢が増え活躍の場が確保されるようになった。
・柔道整復師業界は、今後も競合が増え続ける一方であること、健康保険の取り扱いが年々厳しくなっているため独立後の不安要素も少なくない。
・安定的な収入を得るには、綿密に事業計画を立て複数の収入ルートを確立することが必要となる。

いかがでしたでしょうか?今回の話をきっかけに、納得のいく答えにたどり着けることを願っています。