柔道整復師として開業するには?必要な条件や資金、失敗しないための準備を解説!

柔道整復師 独立開業

独立し、個人で整骨院や接骨院の開業を目指す柔道整復師の方は多いでしょう。

開業をスムーズに進め、成功させるために必要なのは、施術技術のみではありません。

ここでは、資格取得から開院まで、柔道整復師独立開業するために必要な資格や準備、手続きをまとめます。

柔道整復師が開業するための資格・条件

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柔道整復師は、自然治癒力を最大限まで引き出す柔道整復を身につけた国家資格取得者です。

未経験から独立開業を目指すなら、まずはこの国家資格が必要です

また、柔道整復師資格を取得するためにもいくつかの条件が必要になります。

1.柔道整復師資格

柔道整復師の資格は、1989年までは都道府県知事が認定試験を行っていました。

その後1993年に柔道整復師法が改正され、柔道整復師国家試験を施行。年一回の割合で、全国10箇所程度の会場にて国家試験が行われています

ただ、この試験は誰でも受けられるというわけではありません。

柔道整復師の専門学校や大学・短大などで3年以上のカリキュラムを受講し、卒業または卒業見込みのある人だけが国家資格を受験することができます

試験内容は、整形医学やリハビリテーション学はもちろん、その他に一般臨床医学や解剖学など、医学に関する幅広い知識が求められています。

また、試験内容は年々難しくなっており、それに比例して合格率は低下傾向にあります。

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柔道整復師学校とは

柔道整復師のための研修場所でもある養成学校には、厚生労働省が管轄するものと文部科学省が管轄するものの2種類があります。

大学や短大、専門学校や夜間学校など、さまざまな形態がありますが、すべて3年もしくは4年制の施設です。

1998年までは養成施設数は全国でわずか14校でした。ところが1998年の柔道整復師養成施設負指定処分取消請求事件にて国が敗訴。

それ以降、養成施設認定が緩和され、養成学校や養成施設は増加傾向にあります。

ただ、入学者数は減少傾向にあり、養成施設や養成学校が廃校するという事態も起きています。

その原因は、学校経営の旨味を求めて開校した学校が増えたからです。特に夜間部での廃校が目立っており、仕事をしながら学校に通うというのが難しくなってきているという現状があります。

2.実務経験

柔道整復師として独立開業するには、養成所や養成学校での研修や国家資格だけでは充分といえません。それ以外に卒業した後、一定の実務経験が必要になります。

実務経験の期間ついては、開業医として届け出をするタイミングによって、その期間が異なります

2018年4月~2022年3月までに届け出を提出する場合は1年間、2022年4月~2024年3月までなら2年間の実務経験が必要です。2024年4月以降は3年間の実務経験が必要となっています。

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3.施術管理者研修

独立開業するためには、施術管理者になる必要があります。この施術管理者要件の中に、「一定期間の研修を5年以内に受講していること」という条件が盛り込まれています。

研修内容の主軸は、職業倫理・保険請求・施術所管理・安全な臨床の4つです。

これら4つはすべて開業医として必要だと考えられているもので、不正事例なども盛り込まれています。これらを16時間以上2日間で行います。

2020年現在、研修受講は先着順ではなく、申し込みをいったん受けた後に優先順位や条件などを考慮して受講者が決定されます。主な条件は以下の通りです。

  1. 特例対象者
    特例期間中に確約書を提出し、受領委任の登録または承諾をされている人
  2. すでに開業済みの人
    保健所に開設届を提出している人
  3. 開業準備を行っている人
    不動産や機材設備の購入を契約をすでにされている人

以上の3点いずれかに該当する人は、優先的に研修を受講することができます。

詳しい内容については、公益財団法人柔道整復研修試験財団のホームページ内にある「柔道整復師 施術管理者研修」をご確認ください。

こちらでは研修申し込みのついてのQ&A等も掲載されています。

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 柔道整復師の施術管理者研修。開催時期や申し込み方法を解説

施術管理者として開業しないのなら実務経験は不要

「3~4年の通学を経て国家資格を取ったのに、開業するためにはさらに3年の実務経験と研修を受けなければならない」

こうした条件が追加されたことで、開業を諦めている人もいるかもしれません。ですが、開業するハードルが高くなったわけではありません

実務経験と研修については、施術管理者として独立開業をする人に向けての条件だからです。施術管理者としてではなく、柔道整復師として開業する場合は、実務経験と研修は行う必要がありません

ただし、施術管理者として独立開業しない場合は、保険適応の施術を行うことはできません

主な施術内容としては、交通事故と実費のみになります。保険診療としての施術はすべてが不可になりますから、その点は注意が必要です。

特に実費については金額設定にもよりますが、あまり高い金額を設定してしまうと来院する人がいなくなるという可能性は高くなります。

また、保険診療内での施術を望んでいる人は多くいる為、独立開業するにあたっては大打撃となる可能性大です。

柔道整復師の開業に必要な資金

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柔道整復師として独立開業するためには、それなりの資金が必要です。開業を目指している人は、その資金をあらかじめ貯めて用意しておく必要があります。

独立開業だけではなく、柔道整復師になるための学費についても調べました。合わせてご紹介しますので、参考にしてみてください。

1.柔道整復師学校の学費

種別 費用
大学(四年間) 660万円前後
短大(三年間) 300万円前後
専門学校(三年間) 400万円前後

柔道整復師になるためには、3~4年間学校に通う必要があります。そのために必要な資金は、専門学校、短大、大学など、通う学校の種別によって異なります

四年制大学の場合、その金額は4年間で約660万円。この中には、入学費や授業料はもちろん、実験実習費や施設費なども含まれています。

短大の場合は三年制となりますが、柔道整復師になるための短大は全国でも帝京短期大学のライフケア学科柔道整復専攻柔道整復コースのみ(2020年3月現在)。その金額は3年間で約300万円となります。

専門学校の場合、入学金や実習を含めた授業料を合わせて3年間で約400万円です。
ただし、専門学校の場合は大学や短大と違って白衣や柔道着が含まれていない場合が多くあります。さらに授業に必要な教科書なども自分で揃えなければならないため、実際にかかる費用はもう少し多くなります。

奨学金や給付制度を使う方法も

柔道整復師は国家資格ですから、その分他の授業や資格に比べて授業料は高く設定されています。

学費を考えただけで資金的に無理があると思い、独立開業を諦めてしまう人も大勢います。そんな人たちのために用意されているのが奨学金給付制度です。

奨学金には給付型と貸与型の2種類が用意されています。

貸与型は、養成学校を卒業後一定期間が経つと返済が始まる仕組みです。すぐに独立開業することは難しいため、卒業してから返済が始まるまでは一定期間が設けられているのです。

一方、給付金は返済する必要がありません。そのため、条件はかなり厳しくなっています。貸与型に比べてハードルが高くなっているということです。

詳しい内容については、独立行政法人日本学生支援機構のホームページをご覧ください。「奨学金」のページでは、貸与型と給付型に詳しい条件について掲載されています。

また、専⾨実践教育訓練給付⾦教育訓練⽀援給付⾦を利用するという方法もあります。

こちらは社会人が専門的な知識を得る勉強をするために用意された給付金制度です。ハローワークにてこの制度を利用することが可能です。働きながら資格取得を目指している人は、こちらもぜひ利用してみてください。

さらに、専門学校では学校独自の奨学金制度や学費免除制度を設けています。

優秀な人材を育成することは、専門学校にとっての大きな宣伝効果にもつながります。そのため、このような制度を設けている学校はかなり多くあります。

2.資格取得や研修に必要な資金

国家資格や施術管理者を取得するためにもお金が必要です。

まず国家試験の受験料は16,500円となっています。養成学校や養成施設は、国家資格を取得するためのカリキュラムが組まれています。ですが、学費に国家試験のための受験料は含まれていません。

さらに、独立開業するためには施術管理者の資格も取得する必要があります。施術管理者になるためには16時間以上2日間の検収を受けることが条件に盛り込まれていますが、この研修の受講費は20,000円です。

保険診療をしない場合は施術管理者の資格を取得する必要はありません。ですが、施術内容はかなり限られてしまうため、取得しておいた方が無難です。

3.開業のための設備資金・広告費

独立開業するために必要な資金は、約1000万円かかるとされています。

院の規模やどのような医療器材を導入するかによって、この金額は大きく変動します。ですが、それでも1000万円はかかると見ておいた方が無難です。

また、宣伝広告費にも資金が必要です。

チラシを配ったり新聞などに掲載したりするのにもお金がかかります。インターネットを使って上手に宣伝をするという方法もありますから、こちらは方法によっては予算を抑えることは可能です。

ちなみに実際に独立開業した後の年収ですが、場所や規模によって開きがありますが、平均300~700万円と言われています。1000万円以上の利益を上げている院は大変希少です。そのため、開業する前にある程度の資金を溜めておくということも必要になります。

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柔道整復師が開業するための準備・手続き

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柔道整復師として独立開業しても、固定患者がつかなければ経営はうまくいかないでしょう。そのような失敗を防ぐ為にも、開業する前にはある程度の準備が必要です。

資金以外の独立開業のために必要な準備についてご紹介します。

 【関連記事】
 柔道整復師の開業に必要な準備や手続きについて

1.事業計画を立てる

整骨院・接骨院の開業に欠かせないのが「事業計画」。

開業には設備や人件費、広告費など多くの費用がかかります。当面のランニングコストを考えると、自己資金だけだと厳しいという方も多いでしょう。

その場合は銀行や公庫などから融資を受けることになりますが、その際に必ず必要になるのが事業計画書です。

整骨院などの経営経験がない場合には銀行からの融資を受けることは難しく、多くの場合「日本政策金融公庫」に相談することになります。

その際の審査で事業計画書は非常に重要視されるのです。

事業の妥当性や将来性、経営者が自身のビジネスを明確にとらえられているかなど、さまざまな点を見られます。

また、事業計画書は融資を受けるために必要なだけではありません。

自身の経営方針、今後の見通し、事業展開戦略など、事業を始めるにあたって検討するべき項目が多く含まれている事業計画書はビジネスプランや資金計画を具体化し、今後どうやって経営を進めていくかを整理する役割ももっています。

2.物件・設備の用意

事業計画書を作成し、資金が用意できたら次に物件や設備の用意が必要になります。

開業する場所や物件は、その後の集客に大きく影響してきます。まず第一に見ておきたいポイントは立地です。

安定した集客をしていくのであれば、人通りやアクセスは非常に重要です。大通りから一本横道に入ってしまうだけでも集客効率は大幅に変わってくるため、賃料とのバランスを見ながら慎重に選ぶ必要があります。

また、見落としがちなポイントとして「周辺環境」が挙げられます。その物件が繁華街にあるのか住宅街にあるのかなどで来院する患者層は変わってきます。

自分の整骨院・接骨院で「どんな顧客をターゲットにするのか」を念頭におき、物件の周辺環境や住んでいる人の属性と合わせて考えるようにしましょう。

物件探しの際には、内装がすべて取り払われた「スケルトン物件」と、以前の店舗内容が残っている状態の「居抜き物件」の2つの選択肢がありますが、予算を抑えるのであれば居抜き物件の方が工事費用や設備投資が少なく済みます。

3.各種手続き

整骨院や接骨院を開業するためには、開設届や労災保険の届出、税務署への届出など、さまざまな書類を作成し、各機関に提出する必要があります。

申請を忘れたり、知らなかったりして手続きをしていない場合、開業時から保険請求の取扱いが出来ないケースも出てきますので注意が必要です。
開業が決まってから出来るだけ早い段階で書類を揃えてスムーズな開業を目指しましょう。

4.人材確保・求人募集

整骨院・接骨院を開業し、ある程度の集客を見込むのであれば、受付スタッフや施術スタッフなどの人材が必要になります。

近年は柔道整復師資格を持っている人は増えていますが、その分整骨院も増加傾向にあります。

ただ求人募集をすれば人材が集まってくる、というわけではありません。

整骨院の求人募集を行える媒体はインターネット上だけでも多数あるため、それぞれの特徴を知った上で、「自院で働く魅力やメリット」をしっかりとアピールしていく必要があります。

 【関連記事】
 柔道整復師の求人募集のコツ。福利厚生や人が集まる求人サイトを解説

まとめ

以前は柔道整復師として開業するのは比較的簡単でした。
ですが、1993年の法改正に伴い、開業する条件は厳しくなる傾向にあります。条件は今後もますます厳しくなっていくでしょう。

資格や条件に関しても、短期間で大幅な改正が繰り返されているため、こまめな情報収集が必要です。

ただし、これらはすべて独立開業した後も長期にわたって安全に経営を続けていくための条件ともいえます。安全で安心できる開業医が増えれば増えるほど、多くの人たちが院を訪れますから、新たな患者獲得にもつながるのです。

また、施術内容に関しても、独自の施術方法を取り入れると更なる患者獲得につながります。

独立開業することは決して簡単なことではありませんが、その分やりがいが多くなります。しっかりした下準備をして、開業する計画を立ててください。


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