2020/03/16
柔道整復師・開業独立

柔道整復師の開業に必要な準備や手続きについて

柔道整復師 開業 準備

柔道整復師としてある程度の実務経験を積むと、独立開業したいという夢を持つようになります。

最初から柔道整復師として独立開業を目指している人もいるでしょう。ですが、実際に独立開業するのは簡単ではなく、資格はもちろんさまざまな手続きなども必要になります。この記事では、そんな柔道整復師の独立開業の準備や手続きについてご紹介します。

柔道整復師の開業準備と流れ

柔道整復師として独立開業するには、さまざまな準備が必要です。準備が必要な項目はかなりたくさんありますので、チェックリストを作成すると良いでしょう。

まずは、準備の流れをそれぞれの項目に分けて簡単に解説します。

1.資格取得

柔道整復師は国家資格ですので、国家試験に合格する必要があります

柔道整復師の国家試験は、毎年3月に厚生労働省が実施しています。ただ、誰でも受験できるというわけではなく、柔道整復師の養成学校での教育課程を修了する必要があります。ちなみに、教育課程を修了するには最低でも3年はかかります。

教育課程は座学としての知識だけではありません。国家試験に合格したらすぐに実践に入ることになりから、当然実習も含まれています。

実習の仕方は養成学校によって方法が異なり、学校内で実習を行うところもあれば、整骨院で実習を行う学校もあります。

養成学校の教育内容は、特に実習の部分で大きく異なります。将来どんな柔道整復師として独立開業したいのかを考えて学校選びを行ないましょう。

関連記事:【最新版】柔道整復師の失敗しない学校の選び方と学校ランキングを紹介!

2.事業計画

事業計画を立てることも大切です。具体的には、保険診療を行うのか、それとも自費診療のみでやっていくのかということです。それぞれにはメリットとデメリットがあります。

まず保険診療のメリットは、保険給付を受けることができるという点です。施術料金を安く設定することができるため、固定患者さんを得やすいというメリットもあります。
ただし、保険診療を行うには「管理施術者」としての資格を取得する必要があります。また、広告に記載する際にもかなり多くの制限が強いられるというデメリットがあります。

自費診療のメリットは、独自の施術方法などを前面に出して広告できるという点です。施術後の効果もアピールできるため、他の整骨院とは違ったカラーを出すことができます。
ただ、自費診療は保険診療に比べて料金が高くなりがちです。そのため、固定感謝を得るまでにかなりの時間を要するというデメリットがあります。

3.資金調達

柔道整復師として独立開業するには、かなりの資金が必要です。準備に必要な資金を自分一人で用意するのは難しく、この段階で諦めてしまう人もいます。ですが、そのような人たちのために資金調達方法が用意されています。

まず一つ目は日本政策金融公庫です。100%政府出資の金融機関ですから、安心して融資を得ることができます。ただ、かなり審査が厳しく、さまざまな条件をクリアして審査を通った人だけが融資を得ることができます。

保証協会を利用するという方法もあります。こちらは、銀行などの融資を得る際に利用します。銀行は何の保証もない人にお金を貸してくれません。その保証をしてくれるのが保証協会です。もし廃業になってしまった時には、保証協会が代わって銀行に返済するという保証をしてくれます。

関連記事:柔道整復師の開業資金・費用はどれくらい?維持費や調達方法まで詳しく紹介

4.物件・施術所探し

柔道整復師として開業するためには、当然場所が必要になります。物件や施術所探しは、開業したあとの患者数にも大きな影響を及ぼしますから、大変重要なポイントです。

どのような人たちをターゲットにして開業するのかを考えましょう。若い人をターゲットにするのなら、当然若い人たちが集まる物件や施術所を探す必要があります。ただ、その場合は都心部になることが多く、価格はかなり高くなります。

もし年配層をターゲットにするのなら、他の整骨院があまりない場所での物件や施術所探しをする方が良いでしょう。この場合は価格はかなり低く抑えられるかもしれません。ですが、どれだけの患者数を見込めるかが開業後の大きな鍵となります。

5.各種手続き

開業するためには、役所などへのさまざまな手続きが必要です。主な手続きは以下の通りです。

  • ・開設届
  • ・受領委任取扱い契約の届出
  • ・共済組合・防衛省等への届出
  • ・労災保険指定医療機関への届出
  • ・生活保護法等指定施術機関への届出
  • ・税務署への届出

これらすべての手続きを自分一人で行うのも良いですが、代行サービスを利用することも可能です。

ジャパン柔道整復師会」や「日本柔整鍼灸革新会」などのような柔道整復師団体などでは、これらの役所への手続きを代行してくれるサービスを行なっています。開業するための相談などにも乗ってくれるので、利用すると良いでしょう。

なお、それぞれの届出の手続きについては、記事の後半で解説します。

6.スタッフの確保

独立開業するには、自分以外のスタッフも必要です。施術以外の細かな事務作業も自分一人でこなそうとすると、施術に集中できず、患者さんを逃がしてしまうことにもなりかねません。

将来、柔道整復師を目指しているスタッフを確保する場合には、柔道整復師団体を頼るのが一番良いでしょう。先ほどご紹介したジャパン柔道整復師会などでは、人材確保のサービスやサポートも行なっています。スタッフの育成にも力を入れているので相談してみましょう。

また、確保したスタッフは休憩時間などに施術の方法を伝えたり、自分が患者となってマッサージの練習をさせてあげたりする必要があります。最初は事務作業に専念してもらい、ゆっくり時間をかけて育成していきましょう。

関連記事:柔道整復師の求人募集のコツ。福利厚生や人が集まる求人サイトを解説

7.集客

柔道整復師が独立開業したあとの経営で最も大きな壁となるのが集客です。開業しても患者さんが来なければ当然売り上げはゼロになり、最悪廃業ということにもなりかねません。経費以上の利益を上げる必要があるのです。

集客方法としては広告インターネットを使ったものが主流です。

広告については、記載して良い項目と悪い項目がかなり厳しく法律で決められてます。この点に注意して作成しましょう。また、お金もかなりかかるので、資金面での問題も解決する必要があります。

インターネットを使った方法でも、記載内容については同じです。SNSホームページなどは、広告を作成する場合に比べて資金面では安くなります。ただ、維持費が必要になりますから、自サイトなどを導入する際にはその点を考慮する必要があります。

看板を目立つものにするというのも良い方法です。特に人通りが多い場所では目立つような看板にしておくと、集客率のアップが見込めます。

関連記事:柔道整復師の集客について。方法や注意点、成功のポイントとは?

8.開院

柔道整復師として開業することはゴールではありません。本当に大変なのは独立開業したあとです。

最も重要になるのは、いかに集客率を上げるかという点です。集客率はそのまま利益に反映しますから、最も重要なポイントです。

患者さんのニーズに合わせて開院日時を変更したり、施術内容そのものを変更したりする必要もあるでしょう。このような変更を行う場合、今までの患者さんを手放さないようにすることも考えなければいけません。

また、宣伝の方法や事業拡大も考慮に入れて、こまめに事業計画を見直して変更しましょう。スタッフの増員や施術のスキルアップも行うことが大切です。

患者さんは、他にもっと良い整骨院があると聞くとそちらに簡単に流れてしまいます。そのようなことにならないように、常に患者さんのニーズを把握し、自分自身やスタッフのスキルアップも図ることが何より大切です

柔道整復師の開業手続きについて

独立開業に向けて手続きをする柔道整復師

柔道整復師として開業するには、役所での様々な手続きが必要です。これらを行なっておかないと、独立開業することはできません。

どのような手続きが必要なのか、それぞれ解説していきます。

開設届

場所

提出書類

  • ・保健所
  • ・保健センター
  • ・施術所開設届(保健所に問い合わせて入手)
  • ・柔道整復師免許証の写し(原本持参)
  • ・身分証明書
  • ・施術所の平面図
  • ・賃貸の場合は店舗賃貸契約書(写)
  • ・法人の場合は定款、登記簿謄本

開設届は開設後10日以内の提出が必要です。重要なのは、開業した後の提出という点。まだ開業していない状態で保健所に届出を出しても受理してもらえません。

また、保険請求を行う場合は、開設届を行う時期が重要です。厚生労働省に施術所開設届の写しを提出することが必須条件となっているからです。
開設届自体は開業後でないと届出を出すことはできません。ですが、厚生労働省に開設届の写しを提出しないと保険請求はできませんから、柔道整復師として独立開業した初日分の施術料金は保険請求ができないということが起こります。実際にこのような失敗をしている整骨院は数多くあります。

そこで、多くの整骨院では実際の開業日前の何日間かプレオープン期間として設定し、施術所開設届にはプレオープンとして開業した日を開設日として提出します

開設届は代行ができません。必ず開設者本人が保健所へ出向いて開設届を行う必要があります。なりすまし防止のため、身分証明書の提出を求められますから忘れないようにしましょう。また、必要な提出書類はあらかじめ自分でコピーを取って複写を作っておくことも重要です。

受領委任取扱い契約の届出

場所

提出書類

地方厚生局

  • ・施術所の申出書(様式第2号)-取扱い開始の届出
  • ・同意書(様式第2号の2)-勤務柔整師の届出
  • ・確約書(様式第1号)
  • ・施術管理者選任証明-開設者と管理柔整師が別の場合
  • ・施術所開設届の副本
  • ・柔道整復師免許証コピー(原本も持参)
  • ・平面図、周辺地図
  • ・履歴書(不要な場合もある)

受領委任契約の申請は、代行や郵送でも受け付けています。時間がないなどの理由で厚生局へ出向くことが難しい場合は、このような方法で申請を行ないましょう。また、代行は柔道整復師団体などへ入会することで利用できます。事前に確認しておくと良いでしょう。

この申請が遅れると保険請求ができない期間が発生します。保険治療ができなくなるということですから、早めに申請を出すようにしましょう。

共済組合・防衛省等への届出

共済組合の届出は国家公務員関係の保険者と地方公務員関係の保険者では、届出場所や必要書類が異なります。理由は取得できる承諾番号が異なるからです。国家公務員関係の保険者は「共済連盟承諾番号」を、地方公務員関係の保険者は「地方共済協議会承諾番号」をそれぞれ取得する必要があります。

また、自衛官関係の保険者は「防衛省番号」を取得する必要があります。

 

場所

提出書類

国家公務員関係

共済組合連盟

柔道整復師の免許証の写し

地方公務員関係

地方公務員共済組合協議会

  • ・受領委任の取扱いに係わる申請書(様式第1号)
  • ・尊守事項確約書(様式第2号)
  • ・申請理由の申し出
  • ・柔道整復師の免許証の写し

自衛官関係

防衛省 人事教育局衛生官付

  • ・申請書
  • ・確約書
  • ・柔道整復師の免許証の写し

労災保険指定医療機関への届出

場所

提出書類

所轄の労働基準局

  • ・申出書(様式第1号)
  • ・確約書
  • ・指定・指名機関登録(変更)報告書
  • ・保健所開設届(施術所の確認ができる)
  • ・施術所の平面図と周辺図
  • ・柔道整復師免許書の(写)

柔道整復師として独立開業する際、労災の指定機関として指定を受けておくと労災での治療を求める患者さんが増え、集客率を上げることができます。

ただ、申請には1~3か月と時間がかかります。労災の指定期間を受けたいと考えているのなら早めに届出をしておきましょう。

生活保護法等指定施術機関への届出

場所

提出書類

施術者ごとに指定

  • ・指定助産機関・施術機関指定申請書
  • ・誓約書(指定助産機関・施術機関指定関係)
  • ・柔道整復師免許書の(写)(該当する柔道整復師のもの)

生活保護を取り扱うと、自費では難しい人も取り込むことができるので、集客率がアップします。ただし、そのためにはあらかじめ「指定施術機関」として生活保護法からの指定を受けておかなければいけません。

指定を受けるには自治体によって必要書類が異なります。電話などで連絡をして確認しましょう。また、患者さんにも整骨院にかかるための手続きをして頂く必要があります。

税務署への届出

柔道整復師として独立開業したら、税務署にも届出が必要です。納税する場所の管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を届け出ます。

また、届け出る期間は事業を開始した日から1か月以内となっています。遅れないようにしっかり把握して届け出るように注意しましょう。

まとめ

柔道整復師として独立開業するための大まかな流れをご紹介しました。資格を取得するだけではなく、開業するための事務手続きなども多く必要になります。リストを作るなどしてチェックをしながら、開業準備を進めてください。