2020/08/21
柔道整復師・開業独立

柔道整復師が知っておきたい、広告規制や制限について解説

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柔道整復師の資格を取得してある程度経験を積んだら、独立開業したいと思う人は一定数います。

開業した後にまず最初にすることは、自分の病院を宣伝することです。しかし、柔道整復師が宣伝には規制や制限が設けられています。

それらを知らずに広告を出すと罰せられる可能性もあります。詳しい規制や制限について解説しますので、参考にしてください。

柔道整復師が整骨院・接骨院で気をつけるべき「広告」とは?

柔道整復師として独立開業をする際、必ず行なうのが自分の病院の宣伝です。

宣伝をするには公告を使用します。しかし、整骨院は接骨院で行なえる広告の種類や内容は、柔道整復法第24条で定められた範囲内に限られています。このことを知らず、法律に触れるような内容を広告に記載してしまうと、営業停止などのような重い罰が課せられることもあるので注意が必要です。

それでは、どのような広告なら法律に触れないとされるのでしょう。広告に掲載しても良い広告はもちろん、掲載してはいけない内容についても詳しく解説します。

整骨院・接骨院で取り扱う広告の種類

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整骨院や接骨院で広告として取り扱っても良い媒体は以下の通りです。

  • 1.チラシやパンフレットなどの紙媒体(郵送によるダイレクトメールやFAXを含む)
  • 2.ポスターや看板
  • 3.新聞や雑誌などの出版物
  • 4.放送や映写などのメディアや電光によるもの
  • 5.Eメールを使用やインターネットのバナー広告
  • 6.インターネットのWebを使用したホームページ(FacebookなどSNSも含む)
  • 7.不特定多数を対象とした説明会や相談会またはキャッチセールスといった場面で使用されるスライド・録画映像・口頭での演術

状況などによってはこれ以外のものでも広告とみなされることもあります。

また、上記のような方法を用いていた場合でも、広告とみなされない場合もあります。

広告とみなされるのは「誘因性」と「特定性」があるものです。

「誘因性」とは、不特定多数の人々を利用者として引き入れる意図があるということです。

「特定性」とは、施術所名や住所などが記載されており、特定が可能な場合を指します。

これらを満たしていると判断された場合は、広告とみなされます。反対に満たしていないと判断された場合は、広告にはなりません。

医療広告ガイドラインとは?

医療広告ガイドラインとは、医療法に基づいて運営されている医療機関が発行する広告に関するガイドラインです。厚生労働省から管轄しているのですが、定期的に変更される可能性があります。変更時には厚生労働省のホームページで改正された旨が告知されます。「知らなかった」は通用しないので、定期的にチェックすることが大切です。

医療広告ガイドラインの対象となるのは、医業や歯業に携わっている病院やクリニック、そして助産所です。これらの機関や関連施設が広告を出す場合には、医療広告ガイドラインに沿った内容にする必要があります。

 

医療は本来、病や怪我などで苦しんでいる人を治療し、救済することが目的です。一般企業とは異なり、営利目的に走ることは良くないとされています。

また、日本では医療保険制度が整備されており、医療に携わる人たちは保険からその治療費の一部が支払われています。

ここには、「人を救う」という高度な技術を要するサービスに携わるために、必要な知識やスキルを思う存分伸ばして活かして欲しいという思いも込められています。営利目的に走る必要性を和らげることで、技術の育成や成長に時間と労力を使って欲しいということです。

広告に掲載されている内容と実際の治療内容に大きな差があっては、命にかかわります。そのようなことが起こらないようにという意図もあって、医療広告ガイドラインが設けられているのです。

医療広告ガイドラインで規制されている表現とは?

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医療広告ガイドラインでは、表現方法や記載される内容に対して大変細かく規制しています。中には、「え?これもダメなの?」と思うようなものも含まれています。

具体的な規制されている表現について紹介します。詳しく解説もしますので、参考にしてください。

誇大広告

「これをすれば絶対に治る」や「世界的に認められた最高の技術」などのような表現を用いることは禁止されています。「絶対」や「最高」などのような表現が誇大広告に当たるとされているからです。

品位を損ねる広告

キャンペーン値下げを前面に出したような広告のことです。「何が悪いのか」と思う人もいるかもしれません。このような広告は、自分自身が保持している高い知識やスキルを安い金額で叩き売りしているとみなされます。

キャンペーンや値下げができるのなら、その金額を常に保って高いスキルですべての人に施術を行なってあげましょうという意図があります。

比較優良広告

他院と比べて自分の病院が一番良いと判断される表現を用いた広告のことです。他院と比較することは、柔道整復師としてだけではなく、医療従事者として大変恥ずかしいことだとされています。

具体的な例としては、「全国1位」や「お客様からの評価No.1」などの表現が比較優良広告とみなされます。

施術に関する具体的な広告

他院との違いを強調するために、独自に行なっている施術方法などを広告に出したいと思う人は多くいます。しかし、このような行為は禁止されています。

また、「〇〇術」や「〇〇法」などのように、詳しい施術内容の記載がなくても施術方法名が記載されていれば違法になります。オリジナルの方法などについての記載も禁止されているので注意してください。

経歴や実績の広告

広告に施術者の経歴や実績などを掲載することは違法になります。院長の名前などの記載も禁止です。柔道整復師として開業している限りは、資格保持者であることは当然とされています。わざわざ、広告に記載する必要はないと判断されているのです。

具体例としては、施術者の肩書施術風景の写真略歴などです。また、施術経験数なども違法扱いになりますので、記載はやめておきましょう。

紛らわしい名称の使用

紛らわしい名称と使用と言われても、ピンとこないかもしれません。柔道整復師として開業した際、使ってはいけない表現や言葉があります。その代表的なものとして挙げられるのが「治療」という言葉です。

「治療」とは医師が行なう医療のことであり、柔道整復師が携わる施術に用いるのは適切ではないとされています。「治療」という言葉を使って良いのは、医術を用いて病や怪我を治す場合のみということです。柔道整復師の施術は医術を用いているわけではありません。そのため、治療という表現を用いてはならないとされています。

具体的な例を挙げると、「〇〇治療院」などの名称がそれに当たります。また、「クリニック」という表現も医療と勘違いされる可能性が高いため、禁止されています。

患者の主観に基づく体験談

インターネットなどではよく見られる方法ですが、施術を経験した患者の体験談の掲載も禁止されています。これは、人によって効果が異なるからです。例え、同じような感想を持っている患者が複数いたとしても、体験談を掲載すると違法になります。

患者等を誤認させる治療前後の写真

施術前後の写真を掲載することも違法になります。これは、実際に患者の怪我や痛みが回復したとしても、その写真を広告として用いることは禁止です。

広告には施術者の施術実績などを掲載してはいけないと定められています。患者の施術前後の写真は、この施術実績にも該当するため、掲載が制限されているのです。

整骨院・接骨院の広告で掲載可能なもの

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整骨院や接骨院の広告は、禁止されているものばかりではありません。広告の掲載が許されているものもあります。

これから紹介する内容は、すべて広告掲載が可能なものばかりです。自分の病院の広告を作成する際の参考にしてください。

診療科名・名称、電話番号など

診療科名や病院の名前、電話番号の記載は可能です。これらがないと施術を受けたいと思った人が来院できないからです。

ちなみに「診療科名」は、接骨やほねつぎという表現がそれに当たります。

これらは柔道整復師が行なう診療科名になりますので、掲載が認められています。

診療日、診療時間、予約の有無など

診療日や診療時間、予約の有無なども広告に掲載することができます。診療日や診療時間については、これらの記載がなければ患者はいつ治療が可能なのかわかりません。患者側にとっての重要な情報源の一つと言えます。

また、予約の有無に関しても記載が可能です。インターネット予約や電話予約の場合は、その方法についても記載しておきましょう。

敷地内の写真、建物の外見や内装の写真

施術をしているところや、施術に使用する機材の写真掲載は禁止されています。しかし、敷地内の写真や建物の外観などの写真は掲載が可能です。

例えば、病院の入り口の前の写真や周辺の建物などの写真の掲載は可能だということです。初めて病院を訪れる人たちの目印にもなるので、掲載が認められています。

休日または夜間診療の実施

休日や夜間診療の実施の記載も可能です。休日については、記載しておかないとせっかく訪れたのに病院が閉まっていたということを防ぐためにも必要な情報です。

また、夜間診療については、急患の受け入れ有無についての記載も可能になっています。この場合は、急患時の連絡先などの記載も可能になっていますので、必要事項を掲載しておきましょう。

平均待ち時間

あまり見られませんが、平均待ち時間の広告記載も認められています。整骨院や接骨院は、1人にかかる施術時間が長くなりがちです。そのため、待合室で待っている時間は当然長くなります。待っている時間のストレスを少しでも軽減させるために、平均待ち時間の記載をしておくと良いでしょう。

公式HPのアドレス

近年では、整骨院や接骨院でホームページを開設しているところも増えてきています。インターネットで整骨院や接骨院の検索をする人が増えつつあるからです。公式ホームページのアドレス記載は可能とされていますので、もしホームページを持っている場合はアドレスも載せておきましょう。

ただし、ホームページ作成時にはドメイン名に注意が必要です。例えば「www.kanarazunaoru.com」などのようなドメイン名は、「必ず治る」と読めてしまいます。これは誇大広告になると判断されるので違法になります。施術名だと判断できるドメイン名も違法になる恐れがあるので避けましょう。

まとめ

柔道整復師の広告規制や制限について解説してきました。柔道整復師は一般企業と異なり、医療に携わる業務を主としています。医療とは本来は、人を救うということを目的とした高尚なものとされています。そのため、明らかな営利目的と判断される広告は禁止されているのです。

中には「これも?」と思うようなものも禁止事項に含まれています。規制や制限は時代の流れと共に変更されますので、厚生労働省のホームページを定期的にチェックすることをおすすめします。