柔道整復師だからこそ目指せる職業のひとつにスポーツトレーナーがあります。
スポーツトレーナーには柔道整復師の資格が必須!といったら言い過ぎかもしれませんが、柔道整復師が多いのは事実です。
今回は、各種スポーツトレーナーの仕事の特徴や年収、柔道整復師がスポーツトレーナーになる方法など、くわしく解説します。
目次
柔道整復師に多い「スポーツトレーナー」ってどんな仕事?
柔道整復師に多いスポーツトレーナー。スポーツをする人を指導したり、サポートしたりすることが仕事で、国内外で活躍できます。
一口にスポーツトレーナーといっても、役割や内容によってさまざまな種類があります。
チームや活動する場によっても呼び方が変わりますが、代表的なスポーツトレーナーの種類がこちらです。
・メディカルトレーナー
・アスレティックトレーナー
・コンディショニングコーチ
・ストレングストレーナー
・フィットネストレーナー
それぞれの働き方を詳しく紹介します!
メディカルトレーナー
メディカルトレーナーは、「medical=医学の」という名前の通り、ケガや体の回復を目的に指導・トレーニングする仕事です。
サポートする相手:スポーツ障害を持つ人や整形疾患(肩こり、腰痛など)を持つ人
活躍の場:整形外科、接骨院、福祉業界などの医療機関がメイン、TVの撮影現場
具体的な仕事内容は
・リハビリテーションの指導
・スポーツマッサージ
・ケガの治療(低周波治療器などを使った治療や鍼灸治療)
・障害予防(テーピング)
・ケガの応急処置(消毒、アイシング、テーピングなど)
・栄養管理
などがあります。
医師や理学療法士と連携してリハビリメニューの作成や指導をおこなったりと、高齢化の現代で需要の高い人材といえます。
他にも、バラエティ番組などの特番や芸能⼈のスポーツ⼤会など、体を動かす番組撮影の現場にもメディカルトレーナーが控えていたりします。
アスレティックトレーナー
アスレティックトレーナーは、「アスレティック=運動競技の」という意味があり、スポーツ選手が安全に競技ができるようにサポートする仕事です。
サポートする相手:スポーツ選手
活躍の場:競技チーム、競技団体に所属したり、スポーツ選手個人に専属
具体的な仕事内容は
・リハビリテーションの指導
・スポーツマッサージ
・ケガの治療(低周波治療器などを使った治療や鍼灸治療)
・障害予防(テーピング)
・ケガの応急処置(消毒、アイシング、テーピングなど)
・栄養管理
などがあります。
仕事内容はメディカルトレーナーと似ていますが、相手がスポーツ選手なので、医学知識だけでなく、各種のスポーツ理論やトレーナーとしての専門知識・技術が必要とされます。
特に故障した選手のために、チームドクターや理学療法士と連携してリハビリメニューの作成や指導をするという役割が大きく、アスレティックトレーナーはチームにとって重要な存在です。
コンディショニングコーチ
コンディショニングコーチは、スポーツ選手一人一人、もしくはチーム全体のパフォーマンス向上をサポートするのが仕事。いわばチームの体力管理部門です。
サポートする相手:スポーツ選手
活躍する場:競技チーム・競技団体、個人専属、⽂化・芸術団体
具体的な仕事内容は
・ウォーミングアップ、クールダウンのメニュー作成、指導
・トレーニングメニューの開発、指導
・栄養管理、指導
などがあります。
筋⼒、スピード、持久⼒など各種スポーツに必要とされるトレーニングのプログラムを作成・指導することがメインとなります。
ウエイトトレーニング、アジリティトレーニング、スピードトレーニング、フレキシビリティ(柔軟性)トレーニングなど豊富な知識と経験が必要とされる職業です。
意外な活躍の場としては、アーティストや、オーケストラや劇団などの専属となること。
スポーツ同様に体力面の管理や日頃からのコンディショニングが重要な分野なので、トレーナーが帯同していることはよくあります。
ストレングストレーナー
ストレングストレーナーは、筋トレや身体作りなどのサポートをして、スポーツ選手の競技能力を高めることをする職業です。
サポートする相手:スポーツ選手、本格的にスポーツしたい人
活躍する場:プロスポーツチーム、実業団、アスリートの専属、スポーツジムやフィットネスクラブ
コンディショニングコーチと同じように扱われることが多いのですが、ストレングストレーナーは特に「強化」に重点を置いて指導するトレーナーの意味合いが濃くなります。
筋力以外にも持続力や柔軟性の強化、靱帯や腱などの適切な状態など、身体能力と運動能力どちらの知識も必要とされます。
フィットネストレーナー
フィットネストレーナーは、スポーツジムやフィットネスクラブを利用する人に運動を指導する仕事です。
サポートする相手:一般の人、セレブ
活躍する場:スポーツジム、フィットネスクラブ、セレブの専属
フィットネストレーナーが指導する相手は、年齢・性別・体力・目的などニーズがさまざま。
それぞれに合わせて、筋力トレーニングやストレッチの方法、マシンの使用方法などを指導したり、モチベーションアップをしたりと、知識と臨機応変さとコミュニケーション能力が必要とされます。
フィットネストレーナーは、みんなが楽しく、安全に運動できるようなトレーニングメニューを考える、生活に身近なトレーナーです。
フリーランスで独立して、セレブの専属トレーナーになる道もあります。
スポーツトレーナーになった柔道整復師の収入・給料は?
スポーツトレーナーになった柔道整復師の平均年収は300〜800万円です。
一般的な接骨院で働く柔道整復師の平均年収が300〜700万円前後なので、スポーツトレーナーになったからといって年収が大幅に増えるわけではありません。
ただ、中には1000万円、2000万円稼ぐスポーツトレーナーもいます。実績や実力の他に業種や働く環境によっても差が出てしまう部分です。
プロスポーツチーム:300万円~1000万円
実業団チーム:300万円~650万円
選手専属:500万円〜800万円
スポーツジム、整体院:200万円〜600万円
スポーツジムや整体院で働く場合は月給制ですが、プロのチームや個人の専属として直接契約する場合は年俸制になることが多いです。
チームの成績や選手からの評判などで契約更新できるかどうかのシビアな世界です。信頼される人材となれば、より良い条件での契約ができるなど、常に高みを目指すことができる世界とも言えます。
柔道整復師がスポーツトレーナーになるには?
柔道整復師がスポーツトレーナーになるための道は、ひとつではありません。
スポーツトレーナーになるための主な流れはこちら。
・民間資格の協会に登録して就職先を紹介してもらう
・学校の先輩からのツテで声がかかる
・インターンシップ先から声がかかる
・スポーツトレーナー専門の人材会社から派遣される
そもそもスポーツトレーナーには国家資格などはないため、資格取得は必須条件ではありません。
それでも多くのスポーツトレーナーの民間資格があるため、それらを取得し、協会に登録して就職先を紹介してもらう方法がひとつです。
その際に、医療系の国家資格である柔道整復師を持っていることは大きなアドバンテージとなります。
スポーツトレーナーの仕事は、⼀般の仕事のように求人情報が出されることはほとんどありません。インターネットや雑誌、新聞などでは見つけられないんです。
業界内の口コミやつながり、協会を通して声がかかるなどでリクルートされることが多いため、積極的に人脈を広げておく必要があります。
ほかにも、スポーツジムやパーソナルジムで働く、整骨院や接骨院に一度就職して経験を積む、鍼灸師の資格など医療系の資格を取得するなど、知識や経験を積んでおくことが重要です。
スポーツトレーナーになるなら大学・専門学校どっち?
柔道整復師からスポーツトレーナーになるなら、大学と専門学校どちらがいいのか。これは人によってメリットデメリットがあります。
それぞれの特徴を比較してみましょう!
専門学校
専門学校がおすすめなのはこんな人です。
・学びたい分野や目指す方向が明確な人
・ある程度の課題を与えられたほうが集中でき、自分に合っていると感じる人
・学校生活が1日の中心となって生活できる人
専門学校のメリットは、大学に比べて、短期間で安価に柔道整復師や鍼灸師などの専門的な知識や技術を学べる点です。
高校と同じように朝から夕方まで毎日授業が構成されていて、課題も多いため、生活の中心が学校生活になります。
必要な勉強に集中できる反面、時間に追われる、専門分野の変更が簡単にいかないというデメリットもあります。
大学
大学がおすすめなのはこんな人です。
・スポーツトレーナーへの進路は、まだ選択肢のひとつだと考えている人
・専門外のことにも触れながら進路を決めていきたい人
・『NATA-ATC』など、大卒が取得条件に含まれている資格が欲しい人
・学校生活とそれ以外のバランスを取りながら勉強したい人
大学のメリットは、学ぶ分野の幅が広く、カリキュラムの選択次第では自主勉強や現場実習に時間を割くことができる点です。
体育会の部活動にトレーナーとして所属したり、長期休暇などにはインターンシップや短期留学などの現場実習の経験を積むこともできます。
スポーツトレーナーの国際的な資格の中には、大学卒業が取得条件にひとつになっているものも。
柔道整復師の他にもいろいろな資格を取得することで、スポーツトレーナーとしての活躍の場を広げるきっかけになります。
一方で、大学は学費が高かったり、自主性がないと時間を無駄にしてしまうという点がデメリットです。
世界で活躍する有名なスポーツトレーナー3選!
最後に、世界で活躍する有名なスポーツトレーナーを3人ご紹介します。
世界で注目される選手やチームをサポートする日本人トレーナーが最近増え、世界でも存在感を高めています。
今回ご紹介する各トレーナーがどのようにキャリアアップしていったかに注目しました!
森本貴義
アスレティック トレーナー
森本 貴義1973 年 8 月 21 日生まれ 京都府出身
関西医療大学客員教授
PHP ビジネスコーチ上級コーチ
川崎病支援研究所理事
日本ランニング協会関西支部代表元シアトルマリナーズ アスレッティクトレーナー( 2004 ~ 2012 )
元オリックスブルーウエーブ(現オリックスバファローズ) トレーナー( 1997 ~ 2001 )
元 World Baseball Classic 日本代表トレーナー( 2009 年)2013 年から活動拠点を日本に移した後も、アメリカとの往復の日々。
プロアスリート(メジャーリーガー、フィレックスフェルナンデス投手 2010 年サイヤング投手やプロゴルファー、宮里優作選手)などのパーソナルトレーナーとして活動。
(引用:株式会社リーチホームページ)
森本貴義さんは、イチロー選手のサポートもしたアスレティックトレーナーです。
森本さんは大学で鍼灸・あんまマッサージ師の勉強をしながら、先輩のつてを辿って社会人野球チームでインターンとしてトレーナーをしていました。
その活躍から、当時のプロ野球球団オリックスのトレーナーとして採用されます。
ピオリア・マリナーズのインターンシップ・トレーナーとして渡米したのちは、長谷川滋利投手のパーソナル・トレーナを務め、シアトル・マリナーズのアスレティックトレーナーへとステップアップしていきます。
マイノリティである日本人トレーナーの森本さんが、メジャーリーグでアスレティックトレーナーとして活躍できたのは、自身の強みである経験による知識と、手取り足取りの丁寧なケアで選手たちに時間をかけて接してきたから。
現在は、そうした自身の経験と知識を日本人の健康づくりに活かしながら、トレーナーとしての活動を続けています。
中村豊
中村 豊
アスリートマネージメント& フィジカルトレーナー東京都出身
桐光学園高等学校卒業
米国チャップマン大学卒業
(スポーツサイエンス専攻)アスリート形成をモットーに、主要3項目(トレーニング、栄養、リカバリー)から成るフィジカルプロジェクトを提唱。健康から体調管理含め、アスリートのマネージングをしている。米国フロリダ州をベースに活動し、海外で幅広いネットワークを持つフィジカルトレーナー。
(引用:yutakanakamura.com)
中村豊さんは、アメリカを拠点に活動するフィジカルトレーナーです。
世界的なテニスプレーヤーになることを目指して18才に渡米した中村さんは、トレーナーとなって25年以上。
シャラポワ選手の専属トレーナーのかたわら、IMG Academy、テニスアカデミーのフィジカル・コンディショニング部門の総括を務めています。
もともと興味のあったフィジカルトレーニングを学ぶため、テニス留学終了後はカリフォルニア州のチャップマン大学へ入学。
カレッジプレイヤーとしてテニス競技を続けながら、運動生理学、スポーツサイエンスを学び、アメフトや野球チームの学生トレーナーとしても活動してきたことが現在に繋がっています。
アメリカを拠点にずっと活動している中村さんですが、日本人としての道徳心を大切に、欧米のやり方に傾きすぎることなく、日本人や一人ひとりの骨格や特徴に合わせたトレーニングをモットーに、トレーナーとしての役割を続けています。
木場 克己
木場 克己 Koba Katsumi
1965年生まれ 鹿児島出身体幹トレーニング第一人者としてKOBA☆トレを確立
サッカー水泳、陸上他あらゆる競技の名だたるトップアスリートのトレーナー他、back number等の有名アーティストのサポートも務める。
また多くのテレビ出演、雑誌メディアでも活躍。体幹トレーニング関連書籍は子供向け、アスリート向け、女性の美BODY作り、健康年齢について他、あらゆる年齢層に向けた分野で監修。その数は50冊以上、累計発行部数は230万部を突破。
企業での健康講演会、教育現場での体育指導など幅広い分野で健康を広める活動を行っている。
柔道整復師・鍼灸師・健康運動指導士・日本体育協会アスレティックトレーナー
(引用:プロトレーナー木場克己オフィシャルサイト)
木場克己さんは、国内で活躍する日本のプロトレーナーです。
木場さんの最初のキャリアは、整形外科。鍼灸師や柔道整復師の資格を取得して勤務していました。
スポーツ障害を抱えた選手と交流したことをきっかけにアスレティックトレーナーへと転向し、東京ガスサッカー部(現 FC東京)にトレーナーとして加入します。
そのかたわら、自身の接骨院を開業。
現在は医療・リハビリの専門学校での講師、スポーツ選手の個人トレーナーやアーティストのサポート、メディアへの出演、本の執筆など、知識と経験をつかって多岐にわたって活躍しています。
まとめ
柔道整復師からスポーツトレーナーを目指す道は、いろいろあります。
スポーツトレーナーだけでも大きく分けて5つの種類があり、また活躍の場でも役割が異なってきます。
自分が特に特化して極めたい分野がなにか、目指すスポーツトレーナー像とはどんなものかを具体的につきつめたり、イメージすることで、選ぶべき選択肢を見極めるきっかけになります。
医療系の国家資格である柔道整復師は、スポーツトレーナーにとって必要な知識を学べ、肩書きとしてもメリットがあります。
スポーツトレーナーに興味のある人は、第一歩として柔道整復師を目指してみてはいかがでしょうか。