2020/04/20
柔道整復師とは

柔道整復師の仕事って?安定性は?業界の本音をお伝えします

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どの職業においても言えることは、その職業を見た時、外からの見え方のと中からの見え方は同じではないということ。

一見良さそうに見えるあの業界も、今現在働いている人に話を聞いてみたら実は思っていたよりも良くなかったなんてことも。

そこで今回は、柔道整復師業界の実情と本音をお伝えしていきたいと思います。

柔道整復師の本音①仕事内容

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柔道整復師の仕事のやりがいは?

では柔道整復師の仕事にはどのようなやりがいを感じることができるのかを、職場別に簡潔にご紹介します。

接骨院

柔道整復師自身が、初診から治癒まで同じ患者さんに携われる事が多いです。そのため、患者さんとの信頼関係も築きやすく症状が改善した時の喜びが大きいのがやりがいになります。
捻挫やぎっくり腰など痛みの強い症状を施術でき、身に着けた施術技術を発揮する機会が豊富なため、モチベーションを高く保つことができます。

スポーツトレーナー

スポーツトレーナーには施術技術はもちろん、競技種目に対しての専門的なトレーニング、セルフケア、競技に好影響な食事など、幅広い知識が求められます。特に相手がトップ選手であれば、その選手の人生を左右する事もあるため、かなりのプレッシャーでもありますが、逆にしっかり結果を残せばそれだけの大きな達成感を感じることができます。

介護福祉施設

デイサービスや特別養護老人ホームなどで求められるのは、高齢者に対する可動域訓練を含めたリハビリです。なかなか思うように動くことができないために、体全体の機能低下に向かいやすい高齢者の生活の質を向上する事が出来た時には、大きな喜びを感じられます。

教師

自分が学生だった時に憧れた先生のようになりたい!また、この業界に優秀な人材を送り出し業界を活性化させたい!そのような志がある人には、あの頃の自分を思い出し、またその熱い思いを学生にダイレクトに還元できるのは教師以外にはありません。教え子が大きく巣立っていく姿は、毎年感動するものです。

柔道整復師の仕事はこんなことろが辛い!

柔道整復師として仕事をする中で辛いこともいくつかあります。しかしその内容は肉体的にというよりも、精神的や社会的な面において感じる機会がほとんどです。その中で最も多く経験することと言えば、やはり開業後の競争率の激しさからくる精神的なプレッシャーではないでしょうか。

今や整形外科、そして接骨院をはじめとする施術所の総数はコンビニの総数を超えると言われています。その中で、生き残っていくために必要な事を模索していくわけですが、私たちの業界は一般の方の目を引くような宣伝広告ができません。医療法の改正で、割引の広告やビフォーアフター、患者様の越えなどの掲載ができません。他院と比較して売りがあったとしても、広告による新規集客が難しいのも要因の一つになっています。

次に言えるのは、柔道整復師に限ったことではありませんが、職場での人間関係です。基本的に接骨院や中小規模の整形外科で勤務している場合、職場自体の規模があまり大きくありません。
そんな職場内で一番悩みやすいのが仕事に対する価値観の違いや熱量の差です。同じ職場内でも仕事に対しての考え方が違う事で一つのチームとして円滑に回っていかないという話も耳にします。

そしてこれは辛いとは少し違いますが、未だにマッサージ師と柔道整復師を混同されていることが多いです。一般の方からすると接骨院も整体もマッサージも何が違うのか分からないくらい施術の境界線があいまいな部分も多くあるので、これはいつまで経っても変わらないだろうと思います。

柔道整復師の本音② 給料

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最初のうちは安月給…

初めに柔道整復師のお給料事情ですが、年収は300万~700万、月給だと20万~30万前後、新卒の初任給も20万円前後が相場と言われています。
相場なのに下限から上限までかなりの開きがあります。しかしこの差というのは、当然ながら年齢や勤務年数、勤務条件によって大きく変わります。
就職して間もない頃はお給料も多くありませんが、条件次第では段階的に昇給や年収アップも望めます。希望する職場がどのようなお給料の条件なのか、年齢や勤続年数、受け持つポジションや業務内容によってどのように給料体系が変化するかなどしっかりと理解したうえで就職先を決めましょう。

また、仕事の条件別給料の平均年収でみると、接骨院では350万~400万、介護福祉施設などの機能訓練指導士としては約350万、リハビリなどが中心の整形外科では300万~350万が平均的な相場と言われていますので、参考にしてみてください。

独立開業後は年収1000万も目指せる!?

既に独立開業をしている私からまずお伝えしたい事は、独立開業したからといって必ず高収入を得られるという事はありません。むしろ、常に先を見据えて自分で考える力と、考えを形にする行動力がなければ開業しても高収入を手にすることはできないでしょう。
なので開業後に高収入、例えば年収1000万円を達成することは可能ですが、その道のりは決して楽ではないことをお伝えしておきます。

しかし、患者さんのニーズに合わせたサービスや施術技術と、誰に見聞きされても堂々と胸を張っていられるようなクリーンな仕事を行っていれば、次第に患者さんからの信頼もいただけるようになり、地域になくてはならない接骨院になることができるでしょう。そして、その先にこそ「年収1000万やそれ以上の収入を得る」という目標が現実的になってくるのです。

柔道整復師の本音③ 就職・独立

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柔道整復師の就職は難しい?

柔道整復師が就職できる職場が多いことは、施術所数が増加の一途をたどっている現状からもうかがい知ることができるかと思います。

ですので、新卒であれ既卒であれ就職すること自体は難しいことではありません。

新卒であれば、養成学校在学中に多くの接骨院や整形外科などから求人情報が届いているので、学校の指導や助言を受けながら希望の職場を見つけると良いでしょう。

求人情報の中には、新卒募集というような条件を提示している職場もたくさんありますので、新卒でも就職することは決して難しくはありません。

そして、既卒で一度勤務経験のある柔道整復師も、ハローワークやインターネット上の求人も豊富にありますし、在学していた養成校でアドバイスを受けることができる制度があったり、今ではSNS上でも求人募集をしている職場もあったりします。

また、即戦力を求めている職場もあるので、既卒で転職を希望している柔道整復師にも活躍できる職場を見つけることが可能です。

独立開業を目指す柔道整復師は多い!

平成31年時点で、厚生労働省が発表している数字を参考にすると、柔道整復師は約77,000人、施術所数は約50,000か所あるとされています。この数字を見ただけでも、多くの柔道整復師が独立開業という選択肢を選んでいることがわかります。

その理由の一つは、自分の考えを形にしたいということ。雇われて働いている中でも考えをくみ上げてくれる職場もありますが、全て思うとおりに行くわけではありません。それでも自分の思いを形にするならば、開業権を持っているわけだし自分が代表となって開業しよう!という考えに至ります。

二つ目は、一般的な柔道整復師の平均年収よりたくさん稼ぎたい!という考えから開業を目指すパターンも多いです。柔道整復師としても経営者としても自分がどこまでやれるのか知りたい、試したいという思いを抱いて開業をする柔道整復師も多くいます。

ただし、注意しておきたいのは、開業することを目標やゴールにしてしまうとその後うまくいかなくなってしまうことも多いので、開業をしてからも常に新しい目標を持ち、前進し続けることが重要です。

柔道整復師の本音④ ワークライフバランス

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拘束時間はどれくらい?

各柔道整復師の労働条件によって変動しますが、接骨院であれば朝8時30分頃から施術開始となり、午後20時頃に施術終了となるケースが多いようです。ですので、拘束時間は12時間前後が平均的です。
これと比べて整形外科などの病院であれば、午前の診察時間も9時開始となり、午後は19時に業務終了というケースが一般的で、拘束時間としては10時間前後が平均的な数字となります。
また、私のように自分一人で独立開業をしている柔道整復師であれば、午前の施術開始の準備のため、施術開始時間より最低でも1時間は早く出勤して掃除や準備をする必要がありますし、施術時間が終わってからも明日のための準備などがあるため、雇われている時よりも2時間くらいは必然的に拘束時間が長くなります。
ただし、現在では例外的な職場も増えてきており、午前の施術も10時開始とやや遅めのスタートという場合や、午後に至っては夜0時まで対応している接骨院もありますので、自分の就業可能な時間で働ける職場を見つけるようにしましょう。

結婚はできる?

結婚に関しては様々なハードルがありますが、ここでは柔道整復師の年収に条件を絞ったうえで考えてみましょう。
勤務柔整師の年収は平均で350万~400万が相場です。世帯収入として400万未満だった場合はけっこう節約をしないいけない可能性があります。

結婚生活では固定費の他にも様々な想定外の出費も発生するため、あまりギリギリでは心もとない生活になり、かなりストレスがたまってしまいます。

ましてや子どもが出来れば必要な生活費は当然増えるので、その分もまかなえるかというと、正直厳しいものがあります。
特に柔道整復師が男性だった場合。現在の世の中は男女平等と言われるようになり、女性の社会進出も進んできましたが、それでも一家の家計を支える大黒柱は?と言われると、その役目の多くは男性が担うことが社会一般的ではないでしょうか。ですから、このような年収で、子どもを望んで、さらにパートナーが専業主婦で世帯収入の増加が見込めなかったら…と考えたとき、結婚に踏み切れない柔道整復師がたくさんいることもうなずけます。
と、ここまでで終わってしまうと結婚できないという結論になってしまいそうですが、パートナーになる方と協力し、無理のない計画を立てられれば、柔道整復師として働きながらも結婚することはできるでしょう。

柔道整復師の本音⑤ 安定性

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柔道整復師の将来性は?

柔道整復師を志した時、この職業は将来的に大丈夫なのだろうか?と考えたことはありませんか?漠然とそう思った方もいれば、ニュースなどで見聞きした情報からそのように考えた方もいるでしょう。
結論からお伝えすると「将来性はある」と言えます。その根拠はいくつかあります。
例えば現在は高齢化社会が進んでいます。そのような社会だからこそ、介護福祉施設の現場から柔道整復師を必要とする流れが大きくなってきており、従来のような接骨院や整形外科からの需要だけでなく、柔道整復師としての活躍の場が広がっているといえます。
また男性も女性も健康に対して意識の高い方が増えてきた結果、パーソナルトレーニングやヨガなどのスタジオからも体のスペシャリストである柔道整復師の知識や経験を求められたりしています。それに加え、企業のスポーツチームや個人のスポーツ選手と個人契約をする柔道整復師もいますので、相手のニーズに応えられるだけの知識や技術があれば、まだまだこの業界も安定性や将来性は見込めるでしょう。

独立後の廃業率は?

しっかりと計画を立て、自分の思いを形にできたとしても、それが必ずしも続くとは限りません。もちろん柔道整復師だけではなく全ての事業主にいえることです。
では、私たちの業界の廃業率はどのくらいあるのかというと、実は「接骨院の廃業率」という限定的な数字は出ていません。厚生労働省が発表している雇用保険事業年報(2017年)を参考にし、接骨院やそれに準ずる業種が含まれているであろう医療・福祉分野を見た場合、廃業率は3.5%未満であることがわかりました。これは、全業種の平均廃業率が3.5%であることと比較すると、やや低いことが分かります。
しかし、柔道整復師を取り巻く社会的な状況を考えると、今後この廃業率は上昇していくことが予想されます。毎年の柔道整復師が誕生するスピードが現状のまま減少しないと考えると、業界としてはどんどん飽和状態になっていきますし、今ですら接骨院以外の同業他社と患者さんの取り合いに発展しているので、その状況は今後ますます激化していくばかりです。
先にも述べましたが、せっかく開業した接骨院を廃業しなくてもいいように、常に世の中にアンテナを張り巡らし、自分の思いを形にしつつも患者さんのニーズに応えて、地域になくてはならない接骨院作りを目指しましょう。

需要は増えているが、競争率が高いのが現状

今回解説した柔道整復師たちの本音をまとめると

・柔道整復師も幅広い分野で活躍できるようになってきている。
・勤務柔整師でいるうちは安定している代わりに高収入は望みにくい。
・新卒、既卒共に就職すること自体は難しくなく、後に独立開業する柔道整復師も多い。
・現状の廃業率は決して高くはないが、今後高まる可能性はあり得る。

今回お伝えしたことは、良くも悪くもこの業界の一部です。これから柔道整復師を目指す方や、今後どのように進むべきか考えている方の参考にしていただければと思います。