柔道整復師は、骨折や脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのケガに対して整復や固定といった専門的技術を用いて治療を行う仕事です。「ほねつぎ」という名称で親しまれてきた歴史のある職業です。
専門的な技術が必要であるため、養成校・大学に通い国家試験に合格しなくてはいけません。今回は、柔道整復師の国家試験の難易度について解説したいと思います。
柔道整復師の国家試験を受けるには?
柔道整復師の国家試験を受けるためには、文部科学大臣が指定する柔道整復大学、または都道府県知事が指定する柔道整復専門学校で3年以上学び、必要な技能と知識を習得する必要があります。
また、国家試験の願書提出までに大学・専門学校卒業に必要な単位を取得し、“卒業見込み”の認定を学校で受ける必要があるのです。
願書にも、すでに卒業した者であるのか、卒業見込み者(新卒者)であるのか回答する項目もあります。
専門学校・大学で3年以上学ぶ必要がある
柔道整復師は、骨折や脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのケガに対して整復や固定といった専門的技術で治療を施します。
そのため、その“専門技術”を学ぶ必要があります。独学で学ぶには限界があり、座学だけでなく実際に身体に触れる勉強も必要となります。
この“専門技術”は、どこの大学や専門学校でも学べるわけではなく、柔道整復師養成課程のある大学・専門学校でなければなりません。
その大学・専門学校にて、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論、柔道整復師に関わる法律関係を履修します。
それらを学ぶことで知識を身につけつつ必要単位を取得することで、受験資格への第一歩となります。
“卒業見込み”判定または養成校を卒業する
柔道整復師の国家試験を受けるための条件の1つとして、国家試験の願書提出までに大学・専門学校卒業に必要な単位を取得し、“卒業見込み”の認定を学校で受ける必要があります。
願書を記入する際に、「〇年〇月卒業」「〇年〇月卒業見込」のように記載する欄があります。
すでに養成校・大学をした方であれば、卒業年月を記載し、まだ在学中であれば、国家試験を受ける年の3月に卒業が可能である旨を「〇年3月」と記載する必要があるのです。
学校で定められている単位が不足している場合は見込み判定が得られない可能性もあるため、注意が必要です。
柔道整復師の国家試験の難易度は高い?
国家資格は、国が認める資格というだけあって、どれも難易度が高くなっています。
柔道整復師の国家試験も例外ではありません。
では、柔道整復師の国家試験の難易度や合格率はどれくらいなのでしょうか?
まずは平成5年からの国家試験合格率の推移を見てみましょう。
試験回数(年) | 合格率(%) | 新卒合格率(%) | 既卒合格率(%) |
第1回(平成5年) | 90.3 | 90.3 | / |
第2回(平成6年) | 88.7 | 92.4 | 45.8 |
第3回(平成7年) | 82.9 | 90.3 | 26.8 |
第4回(平成8年) | 83.3 | 92.9 | 31.8 |
第5回(平成9年) | 87.7 | 96.0 | 42.5 |
第6回(平成10年) | 85.6 | 94.1 | 23.8 |
第7回(平成11年) | 86.2 | 95.9 | 23.5 |
第8回(平成12年) | 81.3 | 91.0 | 14.9 |
第9回(平成13年) | 77.8 | 89.7 | 22.1 |
第10回(平成14年) | 78.5 | 91.7 | 21.9 |
第11回(平成15年) | 85.6 | 92.4 | 35.6 |
第12回(平成16年) | 78.3 | 80.7 | 15.8 |
第13回(平成17年) | 70.4 | 79.7 | 26.7 |
第14回(平成18年) | 73.2 | 82.5 | 32.5 |
第15回(平成19年) | 74.3 | 85.9 | 33.8 |
第16回(平成20年) | 75.6 | 87.7 | 32.8 |
第17回(平成21年) | 70.3 | 84.4 | 24.2 |
第18回(平成22年) | 77.8 | 91.1 | 40.8 |
第19回(平成23年) | 69.3 | 83.4 | 21.1 |
第20回(平成24年) | 77.4 | 92.7 | 37.7 |
第21回(平成25年) | 68.2 | 83.7 | 13.6 |
第22回(平成26年) | 75.3 | 91.3 | 32.2 |
第23回(平成27年) | 65.7 | 80.8 | 14.7 |
第24回(平成28年) | 64.3 | 82.2 | 22.6 |
第25回(平成29年) | 63.5 | 82.9 | 22.5 |
第26回(平成30年) | 58.4 | 78.5 | 16.7 |
柔道整復師の国家試験合格率は、平成30年度の時点で58.4%です。
一見高難易度の試験であるかのような印象を受けますが、その合格率を新卒者・既卒者に分けて見てみると、決して“難関”ではないことがわかります。
新卒者合格率平均:87.7%
既卒者合格率平均:27.1%
この数字を見ると、柔道整復師の国家試験は新卒か、既卒かで国家試験の難易度が大きく変わることがわかります。
出題基準の変化や法律やその他基準は年々変化しますが、その変化に専門学校や大学はその都度対応してくれます。
一方既卒者は、自ら調べ再学習しなくてはなりません。また、仕事をしながら合格を目指す方も多いため、勉強に当てられる時間にも限りがあるのです。
既卒での国家試験の難易度は非常に高いため、学校側の卒業試験も非常に難易度が高いケースがほとんどとなっています。
柔道整復師の国家試験の合格基準
柔道整復師の国家試験は、“〇名しか受からない”というような試験ではなく、試験の点数が指定された合格ラインに達することで合格となります。その“合格ライン”は以下の通りです。
・必修問題(1問1点)
全30問中の得点が24点以上(総点数の80%以上)
・一般問題(1問1点)
全200問中の得点が120点以上(総点数の60%以上)
国家試験は、1日がかりで行われ、午前に必修問題と一般問題・午後に一般問題を実施します。
必修・一般のどちらも基準をみたしていないと合格にはなりません。前述でもわかるように、柔道整復師の国家試験の合格率は年々低下しています。
合格基準が定められている試験であるのに対して合格率の低下がみられるということは、年々問題が難化していることの表れともいえます。
大学と専門学校で国家試験の難易度が違う!?
一般的に、大学卒の柔道整復師と専門卒の柔道整復師の違いは、学士と専門士という卒業資格の違いや3年と4年の違いなどがありますが、国家試験の合格難易度の違いはあるのでしょうか?
大卒者も専門卒者も、受ける試験は同じですが、大学と専門学校とで、合格率に差が出てくることは確かです。
学校にもよりますが、全体的に合格率が高いのは専門学校と言えるでしょう。
専門学校と大学のカリキュラムの違いは以下の通りです。
大学 | 専門学校 | |
卒業までに必要な年数 | 4年 | 3~4年 |
履修科目 | 大学の必修科目・柔道整復師に必要な科目 | 柔道整復師に必要な科目のみ |
実習時間 | やや充実 | 充実 |
履修科目の差は、大学と専門学校の大きな違いです。専門学校は、その名の通り専門分野に重点を置いて、その点をじっくりと学びます。
その一方で、大学は専門知識の他に、定められた一般教養分野をも学びます。
学ぶ範囲の広さという点で違いが生じます。その点が、学士号と専門士という違いなのです。
また、実習時間も同様です。大学は幅広い分野を学ぶために実習時間もやや少なくなります。
ただし、附属の病院や実習施設を所有している大学もあるため、決して実習が満足に受けられないというわけではありません。
反対に、実習時間が充実しているのは専門学校です。専門学校は、即戦力になる人材を育てることを目標としているため、すぐに現場で働くことができるよう、実習にも時間と力を注いでいます。
大学と専門卒の違い1:履修科目
上記でも述べたように、大学と専門学校とでは履修科目が異なります。
専門知識のほかに、定められた一般教養分野をも学ぶ大学に比べ、専門分野にフォーカスして明確なカリキュラムのもと国家試験を目指す専門学校。
対策を立てて、特定の分野だけ学ぶのと、幅広い分野を学ぶのとでは、難易度(合格率)に違いがでてくるのではないでしょうか?
大学と専門卒の違い2:実習時間
大学と専門学校では実習時間も異なります。
専門学校では座学でわからなかったことも、実習を通して理解できるというケースも多いです。
その、座学で得た知識と実技を関連付けることで、問題に応じた応えを導き出すことができるのです。
柔道整復師の国家試験合格のポイントは?
柔道整復師の国家試験に合格するためには、ポイントを絞った学習が重要です。それらを紐解いていきましょう!
現役合格!
柔道整復師の国家試験は、ずっと同じ出題基準で推移するわけではありません。
現役合格がカギとなる理由は、やはり新しい知識を得ることの重要さにあります。
医学は日々進歩しており、病気の診断基準も年々変化します。そのフレッシュな情報を授業で得ることができる人が、つまり“現役生”なのです。
既卒者はその情報が自然と入ってくることは少なく、自分で調べたり、聞いたりする必要があります。
新しい情報を得ること・整理することには大変な時間がかかります。そのため、現役合格が国家試験突破のカギとなるのです。
出題基準の把握!
国家試験に出題される科目は以下の通りです。
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論及び関係法規
参照元:厚生労働省|柔道整復師国家試験の施行
それぞれの教科の中でも、大項目・中項目と更に細かな出題範囲が決まっているのです。
その出題範囲に沿った学習を進めることが大切です。また、令和3年に出題基準が変更されます。
その際、今までの出題基準とはことなるため、“出題傾向”を把握することが難しくなります。
しっかりと出題基準を把握し、対策を練りながら学習を進めることが重要です。
過去問を解く!
過去に出題された問題、いわゆる過去問を何度も解くことが大切です。
ただ解いて終わりというわけではなく、どうしてその答えになったか理由づけをしたり、その他の回答や単語についての意味や理由を説明したりできるようになるまで何度も解くことが大切です。
専門用語を覚えよう!
参考書や国家試験問題に多く出て来る“専門用語”を覚えることで、より問題を読み解く力が高まります。
やはり、用語がわからなければ問題も解けません。問題の中にわからないことばがないように、専門用語をしっかりと覚えることが大切です。
また、就職後は患者さんに対して、極力専門用語を用いた説明を行わないのが原則です。専門知識のない方でもスッと頭に入るようなことばで専門用語を説明できるレベルに達することで、試験も就職後も有利になります。
人に問題を出題できるようになろう!
よく学生同士で行う問題の出し合いっこは、実はかなり高度です。
まず、柔道整復師の知識や問題の傾向を把握していなければ問題を産生できません。また、その答えを自分で理解していなければ、他者に出題することはできません。
そして、他者の問題の出し方を知ることで、より知識を深めることができます。
空いた時間は、問題を出題しあうこと隙間時間にストレスなく学ぶことができます。
まとめ
今回は、柔道整復師の国家試験やその難易度、国家試験を受ける際のポイントについて解説しました。
国家試験合格のカギはズバリ現役合格です。現役合格をサポートするポイントもいくつかありました。それらを踏まえて、新しい時代の柔道整復師となれるよう、勉学に励みましょう!