柔道整復師は、接骨院やスポーツトレーナーとして骨や関節などの骨折や打撲といたケガに対し、「非観血的療法」という手術をしない手段により、整復や固定などの施術を行うことができる専門家です。
柔道整復師になるには、柔道整復師養成施設が携わる専門学校や大学を卒業し、国家試験に合格することで資格を得ることができます。
柔道整復師は国家資格なので非常に魅力的ですが、柔道整復師になるにはどのようなスキルや向き不向きがあるのか、興味のある人も多いと思いますので説明していきたいと思います。
目次
柔道整復師に向き不向きはある?仕事内容について
柔道整復師の向き不向きを確認する前に、まずは柔道整復師の仕事内容について、職場ごとにご紹介します。
柔道整復師の就職先として、主に以下の5つの職場が挙げられます。
- ○病院などの医療機関
- ○整骨院・接骨院
- ○老人ホームやデイサービスなどの介護施設
- ○スポーツトレーナー
- ○教員
さっそくそれぞれの職場での仕事内容を確認していきましょう。
病院などの医療機関
医療機関で働く柔道整復師は、医師の補助や、マッサージに利用する電気機器の付け替えなどを主に行います。
補助的な役割が多い職場にはなりますが、患者の症状について話を聞き安心感を与えるという重要な役割があることには変わりないため、柔道整復師は医療機関にとってなくてはならない存在です。
整骨院・接骨院
整骨院や接骨院や整体とは異なり、マッサージのほかに外傷に対して処置も行うことが可能です。
生活圏にお店を構えることが多く、長期的な治療を行う場合もあるため、お客様との距離が非常に近い環境となります。
自身で行った治療によってお客様が回復していく様子を近くで見ることができるため、そういった点にやりがいを感じる柔道整復師も非常に多いです。
老人ホームやデイサービスなどの介護施設
介護施設は、急性の外傷に対する治療よりも、機能訓練を行うことが多い職場となります。
しっかりとヒアリングしお客様一人ひとりに合わせた機能訓練のプランを作成するなど、深い知識と柔軟な発想が求められます。
少子高齢化に伴い、介護業界では慢性的な人手不足が発生しているため、特に専門的な知識とスキルが求められる柔道整復師は重宝される存在となっており、将来性の高い仕事といえるでしょう。
スポーツトレーナー
スポーツトレーナーは、選手の怪我や故障に対する応急処置やリハビリ、トレーニングの支援を行います。
柔道整復師として体の調子を整えるだけでなく、メンタル面のサポートも重要な仕事となるため、選手の目線に合わせた仕事が求められます。
スポーツに関わる仕事なるため、スポーツ好きにとっては最適な仕事といえるでしょう。
教員
柔道整復師を目指す次の世代に対して、国家試験合格のための講義を行います。座学がメインとはなりますが、実技演習も行うため柔道整復師としてのスキルも充分活かせるでしょう。
また、生徒が一人前の柔道整復師になるまでを見ていくことができるため、現場とは違う大きなやりがいを感じることができるでしょう。
柔道整復師に向いている人の6つの特徴
柔道整復師は国家資格でもあり魅力的ですが、学校に通って勉強をしたり実技演習をしたりと、簡単な気持ちで取得可能な資格ではありません。柔道整復師になりたいと考えている人や興味があると思っている方に、柔道整復師に向いている共通点を6つ挙げてみました。
聞き上手な人
接客業など人とかかわるお仕事をしている方全員に当てはまる要素ですが、柔道整復師ではより重要となる能力です。
施術中に無言の時間が多いよりも会話をしていたほうが相手に印象がいいのはもちろん、相手を緊張状態からリラックス状態にすることで、ケガの症状を的確に聞き出しやすくなります。
コミュニケーションが苦手だと、相手のケガの症状を詳しく聞き出しにくくなったり、ケガをしている方が整骨院に行きにくく途中から来なくなってしまったりしてしまう可能性があります。
相手が話した内容に対してただ相槌を打つだけでなく、表情や声色を意識しながら共感し話を広げてあげるスキルが重要です。
人の痛みがわかる観察眼がある人
患者さんの症状に最も効果的な施術を行うには、人の痛みがわかる観察眼を養わなければなりません。
柔道整復師を訪れる患者さんは不調や症状を伝えてくれますが、患者さんが口に出していない症状や本人気づいていない身体の変化を察する観察眼は、効果的な施術には必要となります。
また人の痛みを理解する能力も必要です。
患者さんの症状を柔道整復師が理解していると適切な施術に繋がるのはもちろん、患者さんも自分の症状を理解してくれる柔道整復師に対して、安心感はもちろん信頼感も感じてくれるので、大事な能力といえます。
気遣い・心遣いができる人
患者さんへの気遣い・心遣いが行き届くとケガへの不安を和らげ、施術に関しても安心して受けてもらえるでしょう。
また、小さな気遣いや心遣いができると、コミュニケーションにも繋がりますし、親近感や信頼感を感じてくれます。
謙虚な人
整骨院の先生は患者さんにとって緊張する存在です。
謙虚な気持ちが無いと、患者さんへの対応が悪くなったり、患者さんの気持ちを無視した治療方法によるミスにも繋がるでしょう。
威圧感を与えないように患者さんと同じ目線で話を聞いてあげるのはもちろん、患者さんとのコミュニケーションに務めるなど相手目線で考えられる謙虚さが必要です。
自発的に行動できる人
柔道整復師になるには医者さんと同様に施術することが許されている国家資格を取得することになります。
治療の際には、患者さんを診察し患部の状態や原因から、どういった治療を行うかをアプローチする必要があるため、自発的に思考し、行動する考え方が出来なければなりません。
また、柔道整復師の資格を持っていれば、独立開業することが出来るので、将来独立して自分のお店を持ちたいと考えている方は、より自発的行動力が必要になるといえますね。
人の役に立つ仕事をしたい人
柔道整復師という職業に限らず、人の役に立ちたいという気持ちをモチベーションとして考える事がは非常に大事です。
多くの職業の中でも柔道整復師は、ケガや不具合を感じている患者さんと直接関わるシーンが多くあるのでよりやりがいを実感できます。
人の役に立ちたいという気持ちがあれば検診や施術の際にも良い影響を与えてくれるでしょう。
柔道整復師に向いていない人の特徴
柔道整復師に向いている人の特徴を6つ述べてきましたが、反対に柔道整復師に向いていない性格はどういったものがあるのか挙げていきたいと思います。
柔道整復師に向いていない性格に当てはまってしまった……という人もいるかもしれませんが、どうしても柔道整復師になりたいと思っている方なら改善可能なものがほとんどなので、改善を心がけてみましょう。
マイペースに働きたい人
マイペースに柔道整復師一本で生活していきたいというのは難しいといえます。
病院や整骨院など働く場所にもよりますが、1日当たりの実働時間は8時間がほとんどです。
一般的な職業と大体同じだと思ってしまいがちですが、例えば整骨院などの施術院の場合営業開始前の30分~1時間前には出社し、院内清掃やカルテチェックを行わなければなりません。
また営業終了時間は20~21時後と遅い時間まで営業していることが多く、事務作業やカルテ整理などの業務もあります。
さらに、受付終了直前に来院した患者さんへの対応や新人研修、および勉強会などの理由でさらに伸びる場合があります。
帰宅後に関しても、どのような症状のケガでも対応できるように柔道整復師の勉強もしなければならないので、柔道整復師としてマイペースに仕事をしていくのは難しいといえます。
コミュニケーションをとることが苦手な人
柔道整復師に最も必要といえるのがコミュニケーション能力でしょう。
コミュニケーションが出来ないと、診察の際に患者さんのケガの症状を詳細に聞き出せなくなってしまい、適切な治療を行えなくなってしまします。
また、柔道整復師は手技療法での施術が多いので、コミュニケーションが取れないようですと、手でもんだり押したりした際に力が強すぎたり、痛みのある部分を刺激してしまったりします。
患者さんの身体的悪影響はもちろん、精神的にも不安にさせてしまい治療が難しくなります。病院勤務の柔道整復師の場合、医師や理学療法士などと施術用法の打ち合わせや報告会などもありますので、コミュニケーション能力は非常に重要といえます。
型にはまってしまいがちな人
柔道整復師は、日本独自の民族医学が発祥であり、日本の伝統的な施術方法を守ることは大事なことです。
しかし、同じやりかたで施術をし続けていては、日々進化している柔道整復師の知識や施術に遅れをとってしまい効果的な治療が難しくなってしまいます。
そのため、柔道整復師になれたとしても、そのままので停滞させているのではなく、知識や施術方法に対する努力や向上心は必要になります。
柔道整復師に求められるスキルや要素
体力
柔道整復師は手術や薬で治療する医者とは違い、手技療法による施術によって治療を行います。患者さんの身体に手で揉んだり押したりして刺激を与えるので、力や体力を必要とします。
また、手技療法は、生体機能の活性化を高め自然治癒力で、身体の機能の回復を促進させる必要があるので、症状にもよりますが長期間の施術が必要になる場合があります。
そのため、複数の患者さんへの施術が続いても影響が出ないような体力は必要です。
また、体力を限界まで使ってしまうことで、自分自身の体調を悪くしてしまっては元も子もないので、健康面にも気を付ける必要があります。
手先の器用さ
柔道整復師はケガや症状のある部分に対しテーピングやギプスといった器具を利用し、人間の持つ自然治癒力で治療する場合が多いため、手先の器用さは柔道整復師にとっては強みになります。
病院の場合、これらの作業は看護師が対応してくれますが、柔道整復師の治療現場の場合は別で、専門的な知識のある柔道整復師が自分自身で行わなくてはなりません。
また、柔道整復師は手技技法を用いて施術し治療するため、指先の感覚や器用さが求められます。
清潔感
柔道整復師にはコミュニケーション能力が必要ですが、清潔感が無いと第一印象で悪いイメージを与えてしまします。
内面に問題なく非常に高いレベルの施術技術を持っていても、清潔感がなく悪いイメージを与えてしまうと、コミュニケーションはもちろん、この人には施術してほしくないと思われてしまっても仕方がありません。
身だしなみに気を付け清潔感を保つことで、患者さんはもちろん職場内で好印象を与え、この人だったら信頼することができると思ってもらう必要があります。
「柔道整復師に向いていないかも?」と思ったら原因を探ろう!
柔道整復師に向いていない人の特徴に当てはまってしまった人もいると思います。
それでも柔道整復師になりたいといった方や興味がある方に
- ・知識やスキル不足の対処方法
- ・コミュニケーション力不足の対処方法
- ・働き方の改善方法
と3つの原因の対処方法をご紹介いたします。
知識やスキル不足の場合の対処方法
専門学校を卒業し、柔道整復師の資格を取得しても、自身のスキルや知識が不足していると感じることは多々あるかと思います。そういった場合は全国で随時開催されている柔道整復師のセミナーや勉強会に参加することをおすすめします。
柔道整復師のセミナーでは、海外の最新の情報や、有名な柔道整復師が研究・開発した知識、経営についてを学ぶことができます。また、柔道整復師の仕事で活かすことができる、鍼灸の資格取得に向けた勉強をすることもおすすめします。
コミュニケーション力不足の場合の対処方法
コミュニケーション力不足は、現場に立ち始めたばかりの新人の方であれば誰でも感じるものです。そのため現場経験を積むことで、コミュニケーション力に関する悩みのほとんどは解消されるでしょう。
また、コミュニケーション力不足はすぐに改善する問題ではありません。まずは聞き手になることに徹し、相手の意識にベクトルを向ける練習から始めましょう。また、コミュニケーション力の高い先輩や上司の対応を真似してみることもおすすめです。
働き方の改善方法
柔道整復師の多くが働く整骨院は、体力的にも精神的にもハードな仕事ですが、働き方次第では、ライフワークバランスをよくすることもできます。
自身が望む働き方を実現する1番の方法は独立です。有資格者であれば、経験を積むことで誰でも自分の院を持つことが可能ですので、独立も視野に入れて業務に当たることをおすすめします。
また、柔道整復師は整骨院だけでなく、スポーツジムや老人介護施設、整形外科など、幅広い現場で活躍しています。どうしても整骨院が合わないといった場合は、転職も一つの手段として考えることをおすすめします。
まとめ
柔道整復師に向いている人、向いていない人について解説しましたが、向いていないからといって諦めてしまうのはもったいないことです。柔道整復師は、整骨院・接骨院だけでなく、スポーツジムや老人介護施設、整形外科など、様々な職場で活躍できる資格です。
1つの職場でうまくいかなかった、という場合でも、活躍できる場はたくさんありますので、転職も視野に入れてみるといいでしょう。
また、柔道整復師の資格から派生して針灸師資格の取得、介護支援専門員(ケアマネージャー)資格の取得などを目指すことで、ステップアップも可能ですし、活躍する場も広がります。