2020/05/07
柔道整復師とは

柔道整復師として働くメリットデメリット

柔道整復師

柔道整復師の仕事には魅力的な部分が多くある一方で、リスクもやはりあります。後悔しないために、柔道整復師の資格についてしっかり理解しておきましょう。

この記事は「柔道整復師を目指しているけど不安が大きい…」という人のために、柔道整復師のメリット・デメリットについて解説していきます。

柔道整復師のメリットは?

柔道整復師のメリットを理解しておけば、強みがわかった上での就職活動や仕事の選択肢が生まれます。まずは柔道整復師と、他の医療系資格の違いを見てみましょう。

柔道整復師と、他の医療系資格の違い

区分

資格名

開業権

保険診療

国家資格

柔道整復師

鍼灸師

按摩・マッサージ・指圧師

理学療法士

×

民間資格

スポーツトレーナー

×

整体師

×

カイロプラクター

×

柔道整復師は医療系資格の中で、唯一、開業も保険診療も認められている資格です。
主な仕事は、ケガ(骨折・脱臼・打撲・捻挫など)が原因で損傷した骨・関節・筋肉・靱帯などを、自らの手技で治療することです。

柔道整復師の知識と手技は、整骨院や接骨院だけでなく、スポーツ業界や介護福祉現場など幅広い分野で活躍できます。将来的には自らの整骨院・接骨院をもつことも可能です。

柔道整復師のメリットはこんなにあります!

  • ・「国家資格」という安心感と信頼
  • ・保険診療ができる
  • ・ケガの治療ができる
  • ・活躍の場が幅広い
  • ・開業権がある
  • ・医師の判断なし、自分の判断で治療ができる
  • ・初任給が高い
  • ・一人の患者と深くかかわることができる
  • ・女性は特に需要が高い

「国家資格」という安心感と信頼

柔道整復師は、医療系国家資格です。

国家資格である柔道整復師は、整体師やカイロプラクター、スポーツトレーナーなどの民間資格と比べると、自らの判断でできる仕事の範囲が広いです。だからこそ、資格取得までには厳しい道のりがあるんですね。

3年以上専門的な環境で相応な勉強量をこなし、合格率6割の難関を突破する…
これは誰にでもできることではありません。

だからこそ、柔道整復師という国家資格を取得した自分の知識と手技に自信をもつことができ、患者さんにも安心感を与え、信頼を得ることができるのです。

保険診療ができる

柔道整復師は、患者さんの治療を保険診療でおこなうことができます。整体師やカイロプラクターなどは保険診療はできません。

自費診療は施術者としての信頼が厚く、顧客が集まれば、大きく報酬を得ることも可能ですが、そう簡単ではありません。その点、柔道整復師の保険診療は、患者さんにとっては費用を抑えて、国に認められた治療を受けられるため、満足度が高いです。

結果、院の集客にもつながっていくため、安定した収入を得やすいのです。

ケガの治療ができる

柔道整復師は、患者さんのケガの診察から治療まで一貫して対応ができます。
これは当たり前のことに思えて、実は柔道整復師の特権なんです。

スポーツトレーナーや整体師、カイロプラクターなどの民間資格の場合は、身体機能の改善をサポートすることはできても、ケガを「治療」することは認められていません。

一方で、医療系国家資格を持っている人の「治療」は、医療類似行為として法律に認められています。だから保険診療が認められているんですね。

ただ、鍼灸師や按摩などは治療できるケガの範囲がかなり限定されていたり、理学療法士は自らの判断で治療はできないなどの制約があります。

保険適応で診察から治療までできるというのは、柔道整復師の大きな強みといえるでしょう。

活躍の場が幅広い

柔道整復師はケガの治療を自分の判断でできるので、さまざまな場で活躍できます。
緊急の場合は、骨折や脱臼などの重傷なケガでも医師の許可なく診断、治療できます!

柔道整復師の知識や手技は、医療の現場だけでなく、スポーツのチームトレーナーとしても重宝されるのです。

開業権がある

柔道整復師は、自分の接骨院や整骨院を開くことができます。医療系の国家資格には、開業権がある資格とない資格があるんです。

柔道整復師のように、個人で接骨院や整骨院を独立開業できるということは、自分の理想の院をつくれるということ。しかも自分の判断で治療をおこない、医師の治療と同じように保険適応でできます。

自分の将来を描きながら3年間の実務経験を積めば、より確かな開業への道すじが見えるはずです。

医師の判断なし、自分の判断で治療ができる

柔道整復師の治療には、医師の判断が必ずしも必要なく、自らの知識と経験を元に診断することができます。

自分の判断での治療は自由が利く分、患者さんひとりひとりに対しての責任を持つことになります。生涯勉強とも言える職業ですが、医療に関わる人間としてやりがいのある職業です。

初任給が高い

柔道整復師は実は、初任給が高めです。一般企業と、医療系資格の初任給平均額を調査してまとめました。

資格・働き方

初任給平均額

一般企業(大卒)

19〜21万円

柔道整復師

23〜25万円

鍼灸師

21〜23万円

按摩・マッサージ・指圧師

18〜23万円

理学療法士

20〜24万円

スポーツトレーナー

18〜23万円

整体師、カイロプラクター

19〜21万円

(参考:給料ナビ
柔道整復師の初任給平均額はなんと23〜25万円で、一般企業に就職した大卒者よりも高めです!国家資格である柔道整復師は活躍できる場が幅広く、ニーズが高いということが初任給にも表れています。

さらに将来的には自分で開業した場合は年収1,000万円を超えるなど、頑張り次第で収入を飛躍的に伸ばすことも可能な職業です。

一人の患者と深く関わることができる

柔道整復師は、患者さん一人一人とじっくりと関係を築きやすい職業です。患者さんはケガの治療やリハビリのために、ある程度の期間をかけて通う必要があります。

接骨院や整骨院というのは、ケガをしやすいご老人だけでなく、スポーツをする子どもたちにとっても身近な存在となります。

いわば地域に密着した存在なので、来院する患者さん一人一人ときちんと向き合うほど、信頼関係が深まり、困った時に頼られる「先生」になることができます。

女性は特に需要が高い

柔道整復師として活躍する女性は年々増えています。20年前は都内の専門学校でも柔道整復師を学ぶ女性は9%ほどだったそうですが、現在では約30%にまでのぼっている学校が多いんです!

性別

在学生数

158人

66人

(参照:関西健康科学専門学校

女性の患者さんも増えているなか、女性の柔道整復師に対応してもらいたいと思っている患者さんが増えるのは自然な流れ。細やかな気遣いやプラスαの女性が求める要素を取り入れられるのは、女性の柔道整復師ならでは。

接骨院・整骨院などで、女性の柔道整復師のニーズは今後ますます高まっていくでしょう。

柔道整復師のデメリットは?

どんな職業にも、メリットもあればデメリットもあります。柔道整復師の場合は、資格取得の段階から開業に関わるものまで、デメリットがいくつかあるので解説していきます。

デメリットは弱みのように感じられますが、前もって備えることで回避できるものもあります!今後の参考にしてくださいね。

  • ・資格取得のハードルが高い
  • ・拘束時間が長い
  • ・同僚との人間に悩みを持つ人も
  • ・クレームのリスク
  • ・院数が多く競争が激しい
  • ・独立した際に人材が集まりづらい
  • ・「柔道整復師」と「整体師」の違いが患者に伝わりづらい

資格取得のハードルが高い

柔道整復師の資格は受験者の4割は不合格になるほどの難易度。さらに、取得までには手間とコストがかかります。

受験資格

3年以上柔道整復師に必要な知識や技術を専門的な環境で学んだ人

学費平均

大学:400万円~700万円
専門学校:200万円~600万円

資格試験合格率
(2018年度)

65.8%
(受験者数6,164名 合格者4,054名)

試験実施日

年に1回

柔道整復師は必ず専門学校か大学で学ばないと受験資格がもらえません。しかも資格試験は年に1回

公益財団法人柔道整復研修試験財団は柔道整復師の資格の質を上げるため、試験内容の改定を実施したばかりです。今後の合格率の動きに注意して、試験対策をしましょう。

拘束時間が長い

柔道整復師の働き方のデメリットのひとつが拘束時間です。多くの接骨院は9〜12時、15〜20時が受付時間です。実働8時間のように見えますが、実際は受付開始の30分〜1時間前には準備などのために出勤しますし、帰りも片付けや事務作業があります。

3時間のお昼休憩時間も、一部は勉強や研修になる場合もあるため、実働は11時間前後・・・ なんていうことも!!

もちろん勤務する接骨院によって違いますし、就職先は接骨院だけではないので、柔道整復師だから必ず拘束時間が長くなる、ということではありません。

同僚との人間関係に悩みを持つ人も…

柔道整復師の中には職場の人間関係に悩む人もいます。自らの手で患者さんを治すんだという気持ちの強さから、こだわりが強い人も柔道整復師の中にはいます。経験が長くなるにつれ柔軟に他人の意見を聞ける人もいれば、そうでない人も…。

患者さんのためには協力やチームワークも大切な仕事なのですが、院長や上司、先輩のこだわりの強さが自分とは合わないタイプだと苦労します。

クレームのリスク

柔道整復師として、多くの患者さんの治療にあたっていると、クレームを言われることもあります。患者さんひとり一人と深く関わることができるのが柔道整復師の魅力ですが、その分クレームになった際には精神的負担は大きいです。

柔道整復師は医者とは違うため、治療の効果がない、マッサージが痛い、接客態度がなってないなど、施術を受けた人からのクレームは少なくありません。

院数が多く競争が激しい

柔道整復師は開業できるのがメリットですが、その分この10年でも倍近く整骨院・接骨院の数は増えています。柔道整復の施術所(整骨院・接骨院)の数の推移をまとめました。

 

平成20年

(2008年)

平成30年

(2018年)

増減率

柔道整復の施術所

34,839ヶ所

50,077ヶ所

43.7%

(参考:厚生労働省 平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

全国のコンビニの数は55,000軒以上と言われており、整骨院や接骨院はそれと同等の数に近づいているということになります。これだけ年々院数が増えていると、開業した際には競争率が非常に高くなる ことが考えられます。

独立した際に人材が集まりづらい

柔道整復師の数は年々増えてはいますが、独立開業した接骨院・整骨院では人材の確保が難しい傾向にあります。

直近6年の、柔道整復師の資格合格者と柔道整復師として就業している人の数の推移をまとめました。

年度

柔道整復師合格者

就業柔道整復師

平成24年

4,438名

58,573名

平成25年

5,349名

平成26年

4,503名

63,873名

平成27年

4,582名

平成28年

4,274名

68,120名

平成29年

3,690名

平成30年

4,054名

73,017名

(参考:平成 30 年衛生行政報告例|厚生労働省

就業柔道整復師については2年に1回のデータしかないのですが、2年で5,000人前後増えていることがわかります。つまり、柔道整復師として働く人は平均して年に約2,500人増えていることになります。

対して、柔道整復師の資格合格者は毎年コンスタントに4,000〜4,500人です。

院数は増加し、有資格者も増え続けているのに、働く人数は追いついていない。柔道整復師を必要としている現場は、常に人手不足の状況なんです。

「柔道整復師」と「整体師」の違いが患者に伝わりづらい

柔道整復師は国家資格であることが最大の強みなのですが、それが患者さんには伝わりにくい現実があります。

患者さんにとっては、柔道整復師と、民間資格である整体師の違いがわからないという話はよくあること。国家資格であるからこその信頼や安心感を持ってもらえれば、より確固とした集客につながります。

普段から柔道整復師と整体師との違いを理解してもらえるようなアプローチが必要になります。

柔道整復師のデメリットは事前に把握することで対策可能!

柔道整復師にはメリットもデメリットもあります。資格取得の難しさや拘束時間、独立開業の際の人材確保など、デメリットもいくつかありますが、今から知っておくことで対策を取れるものが多いです!

自分で診断して、保険適応で治療ができる。開業権がある。活躍できる場が広い。など、他の医療系国家資格と比べても、魅力の多い柔道整復師。柔道整復師として、自分が目指すビジョンをより具体的に考えてみてくださいね。