2020/06/18
柔道整復師とは

機能訓練指導員とは?仕事内容や給与、柔道整復師が目指すメリット

機能訓練指導員

柔道整復師の働き方は接骨院だけではありません。

柔道整復師として学んだ知識や手技、経験を「介護予防」にいかすことができる仕事「機能訓練指導員」。

今回は柔道整復師が機能訓練指導員を目指すメリットについてお伝えします!

機能訓練指導員とは?

機能訓練指導員は、介護保険法によって定められているリハビリ分野の職種のひとつです。

機能訓練指導員が高齢者を指導する目的は大きく分けて2つ。

・身体機能の回復…ケガや病気からの体のリハビリ
・心身機能の維持向上…自立した生活を少しでも長く続けられるための心と体のケア

仕事は、ひとりひとりに必要な訓練を判断するところから始まります。

生活環境や身体機能の確認・評価、利用者本人やご家族の意向も聞きながら、機能訓練計画書を作成します。

計画に沿って指導をしながら、3ヶ月ごとに経過や状態などを踏まえて機能訓練計画書をねり直します。

機能訓練指導員は、一人一人と密な信頼関係を築きながら、高齢者が生き生きと生活できるようにサポートするお仕事です。

機能訓練指導員になるには?必要な資格

機能訓練指導員として働くためには、次の8つの資格のいずれかを持っていなければいけません。

・看護師または准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ指圧師
・柔道整復師
・鍼灸師

ここで注意したいのが、機能訓練指導員は資格の名前ではないということ。試験などもありません。

医療系の国家資格を使った「働き方」のひとつなんです。

例:「柔道整復師の資格を使って、機能訓練指導員として働く」

平成28年に厚生労働省が発表した機能訓練指導員の内訳です。

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参照:自立支援・重度化予防を推進する観点からのリハビリテーション機能の強化|厚生労働省 

機能訓練指導員には看護師・准看護師の割合が多い現状ですが、学んできた知識やスキル、保有している資格が違うからこそ、業務内容や働き方にはそれぞれの強みがあります。

看護師または准看護師

看護師・准看護師は医療系の資格の中でも医学的知識の専門性が高いので、体調管理、病気のリスク管理、けがの処置などをおこなうことができます。

看護師は国家資格、准看護師は都道府県知事が認定した免許です。

通所介護施設(デイサービス等)では、機能訓練指導員と看護師を兼務することもあります。

看護師の経験によってはリハビリや機能訓練の知識やスキルが十分でない場合もあり、働きながら覚えていくケースが多いです。

理学療法士

理学療法士は、運動療法や物理療法を用いた運動機能回復のためのリハビリテーションに特化した資格です。

病気やケガによって運動機能に障害のある人のリハビリだけでなく、日常における基本動作の回復・維持・悪化予防の機能訓練を得意とします。

理学療法士が機能訓練指導員として働くことで、起き上がり、筋力強化、座位保持、車いす移乗、歩行など高齢者にとって重要なポイントを押さえた指導ができます。

作業療法士

作業療法士は、応用動作と社会適応能力のリハビリレーションに特化した資格です。

入浴、食事、掃除など生活に欠かせない動作と、心理的な部分の機能訓練を得意とします。

機能訓練指導員として、食事、料理、遊び、スポーツなどのレクリエーションを通して、高齢者の心と身体の両面から回復をサポートします。

言語聴覚士

言語聴覚士は、言語、聴覚、発声・発音、認知などの各機能に関わるリハビリテーションを専門とした資格です。

言語聴覚士が機能訓練指導員として働く場合、言語訓練のほか、嚥下障害・口腔機能など「食べる」ことに関するリハビリ指導も求められます。

言葉をしゃべったり、食事ができるというのは、高齢者にとって生きがいにつながります。言語聴覚士の知識や技術を求める高齢者・施設は多いです。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、肩や首のコリ、腰痛、筋肉のハリ、疲労感などを、マッサージや指圧療法などの手技によって軽減することができます

痛みなどの身体の不調は機能訓練にも影響が出ます。

機能訓練指導員として働く場合、あん摩マッサージ指圧師の強みをいかしながら、リハビリや介護業務全般について働きながら学んでいくケースが多いです。

柔道整復師

柔道整復師は、骨や筋肉など、人体の損傷に対して整復・固定等の手技によって機能を回復させることができます

高齢者特有の疾患に精通していることも多く、問診・視診・触診と医学的知識から症状を判断することもできるため、柔道整復師は高齢者施設でも重宝します。

身体に痛みがあると機能訓練もはかどりません。

機能訓練指導員として働く場合、強みである機能回復の指導をしながら、リハビリや介護業務について働きながら学んでいくことが多いです。

鍼灸師

鍼灸師は平成30年の介護保険法改定に伴って、新たに機能訓練指導員の条件資格に追加されました。

鍼灸は自然治癒力を引き出して患部を改善させたり免疫力を高めたりしていくことができる技術で、医療系の国家資格です。

ただ、鍼灸師が機能訓練指導員として働くには、鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設にて半年以上の実務経験をしてからという条件つきです。

機能訓練指導員の仕事はきつい?仕事内容とやりがい

機能訓練指導員が活躍する職場は主に高齢者向け施設ですが、種類がいろいろあります。

・デイサービス
・ショートステイ
・老人ホーム
・介護療養型医療施設
・病院併設型リハビリステーション
・介護老人保健施設

利用する高齢者の要介護度や目的によって、利用する施設は変わります。

そこでの機能訓練指導員の主な仕事内容はこちら。

・個別機能訓練加算計画書・運動器機能向上計画書の作成
・バイタルチェックの実施
・集団体操などのメニュー考案
・リハビリ機器利用時の介助、指導
・個別リハビリの実施
・計画書に対する評価、モニタリング
・体力測定の実施
・介護職員へ機能訓練内容の指導
・ご利用者送迎 など

ただ、職場によって求められることは少しずつ違います。それぞれの施設の特徴と仕事内容を解説します。

デイサービス

デイサービス(通所介護)は、要介護認定を受けた高齢者が日帰りで利用できる施設です。

機能訓練をしたり、ほかの利用者と交流することで社会的孤立感の解消や認知症予防を図ることができます。
デイサービスには1名以上の機能訓練指導員の配置が義務付けられていて、最近では機能訓練に特化したデイサービスも増加しているので、機能訓練指導員の需要が高まっています。

デイサービスにおける機能訓練指導員の仕事は、要介護認定を受けた高齢者の身体機能の維持向上を目指すための訓練を計画・指導することです。

ショートステイ

ショートステイ(短期入所生活介護)は、要介護認定を受けた高齢者が数日~1週間くらいの短期で施設に入所できるサービスのことです。

食事や入浴などの日常生活の介護のほか、リハビリテーションやレクリエーションなどを通じて機能訓練もおこないます。

デイサービス同様、ショートステイも機能訓練指導員を1名以上配置するよう義務付けられています。

ショートステイの機能訓練指導員の仕事は、デイサービスと大きく変わりません。

要介護1~5の認定を受けた高齢者の身体機能の維持向上を目指すための訓練を計画・指導することです。

老人ホーム

老人ホームは、高齢者(概ね65才以上)の方が入居して生活する施設です。

地方公共団体・社会福祉法人が運営している「特別養護老人ホーム」と民間企業が運営する「有料老人ホーム」があります。

有料老人ホームは、自立している人から要支援・要介護の人まで幅広い人が対象になりますが、特別養護老人ホームは要介護3以上の人が入居対象です。

要介護3以上は日常生活全般に全介助が必要な状態。

そのため、一口に老人ホームの機能訓練指導員といっても、働く施設が有料か特養かで機能訓練の内容が変わってくると考えてよいでしょう。

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設は介護療養病床ともいいます。医学的管理が必要な要介護者を受け入れる、医療法人が運営する施設です。

医療施設なので看護師の人員配置が手厚く、医療処置に対応しています。

掃除、洗濯、買い物などの生活援助系のサービスはあまり提供されておらず、どちらかというと病院と同等の施設です。

終身制というよりは1年前後の短期間で心身の状態の改善を目指す施設でもあるため、機能訓練指導員の役割は大きいといえます。

病院併設型リハビリステーション

病院併設型リハビリステーションは、デイケア、通所リハビリテーションとも言われます。

在宅で生活を送る要介護1〜5の認定を受けた高齢者や障害を持つ人が可能な限り自立した生活を送れるように、機能訓練やリハビリを目的としている施設です。

病院併設型の場合は、手術後の入院患者さんも利用します。

機能訓練指導員は、医師の指導に基づいて機能訓練を実施します。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、医療ケアやリハビリを必要とする要介護1以上の高齢者を受け入れている施設です。老健ともいわれます。

特別養護老人ホームと違って、3〜6ヶ月の一定の期間、医師による医学的管理の下で看護・介護・機能訓練を受けます。

自宅復帰を目指すための施設なので、機能訓練の器具や用具も充実していて、機能訓練指導員の役割は大きいです。

利用者さんのモチベーションを下げずに指導に当たることが重要になります。

柔道整復師が機能訓練指導員になるメリット

理学療法士や作業療法士などが担うイメージの強い機能訓練指導員ですが、柔道整復師が目指すメリットもあります。

開業権を持つ機能訓練指導員を目指せる

柔道整復師には整骨院・接骨院の開業権があります。そのため、自分の接骨院で機能訓練をすることも可能なのです。

ケガの診断、治療から回復のための機能訓練までトータルで患者さんを見ることができます。

また、デイサービスは誰でも開業ができますが、柔道整復師が開業した場合は自分が機能訓練指導員ができるため、他は生活相談員、介護職員のみの求人で運営ができるのもメリットです。

幅広い職場で必要とされる

柔道整復師の機能訓練指導員が多くの職場で求められる理由には、その資格の信用・信頼度の高さがあります。

骨・関節や筋肉の仕組みなどをしっかり理解して、利用者さんの状態をしっかりと見極めた上で指導ができるからです。

特に接骨院・整骨院で多くの高齢者を診てきた経験がある柔道整復師は、機能訓練指導にも大きな力を発揮します。

機能訓練指導員は将来性がある?

2030年には人口の30%が高齢者となるといわれており、機能訓練指導員の需要は高まっています。

今後高齢化はさらに進んでいくことが予想されているため、機能訓練指導員は将来性のある仕事といえるでしょう。

老人ホームやデイサービスなどの介護業界は、慢性的な人手不足が続いており、専門的な知識とスキルを持った機能訓練指導員の資格を持った人材は、特に重宝されるでしょう。

機能訓練指導員の年収・給与

機能訓練指導員の給与は、厚生労働省のデータによると、平成30年度の機能訓練指導員の平均給与額は34万円です。
(参照:平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果

これは、基本給22万円に、手当やボーナスなどを全部足して平均を出した数字なので、月の手取りはもう少し下がります。

それでも年収にすると400万円ほどなので、一般的に給料が低めと言われる介護職のなかで、機能訓練指導員の給与は安定して高めであると言えます。

機能訓練指導員の研修・講習

機能訓練指導員になるための研修や講習はありません。

ただ、機能訓練指導員として働くなら、柔道整復師としての知識に加えて、介護職に関する専門知識が必要です。

柔道整復師のほか、理学療法士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師などがそれぞれ会員登録している公益社団法人などでは、機能訓練指導員としての知識や技術を学べる講習会・研修会が開催されています。

受講資格は?

講座を受けるには、機能訓練指導員として働ける条件となっている国家資格を有していることが前提条件です。

講座によっては、すでに介護施設で機能訓練の業務に従事している、または従事予定であるなどの条件が加わることもあります。

公益社団法人の会員であっても、非会員であっても、受講できるものがほとんどです。

受講料は?

講座や研修を実施する公益社団法人の会員であるか、非会員かで受講料が変わることが多いです。

会員で4万円〜10万円と、内容によって金額が変わります。

非会員の場合は会員のおよそ倍ほどすることもあるので、自身が登録している協会主催の講座に参加するのがベストです。

講習の内容はどんなもの?

講義や実技など、それぞれの講習や研修の目的によって内容はさまざまです。

講義では、介護予防・体力測定法、高齢者の合併症とリスク管理、 理学療法(運動療法)、認知症についてなど高齢者に関わる医療的な内容から、社会保険制度や介護保険制度など機能訓練指導員として欠かせない知識を学べます。

実技では、関節可動域や筋力の検査、機能回復訓練など、より高齢者に対して実践できる内容を学べます。

機能訓練指導員としての自分の質の向上に必要だと思う内容を選択していきましょう。

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