そもそも、柔道整復師ってあまり馴染みがない言葉ですよね。柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷などのケガに対して、整復や固定を行う、医療系の国家資格です。
名前だけではなかなか分かりづらい職業です。今回は柔道整復師がどんな仕事につくのか、また、それぞれの仕事内容や資格を取得する方法について紹介していきます。
柔道整復師の“柔道整復”って一体何なの?
柔道整復師が行う治療のことを柔道整復術といいますが、これは日本古来の武術ひとつである「柔術」から由来しています。
柔術には、相手を殺傷するための「殺法(さっぽう)」と、傷ついた人を蘇生や治療するための「活法(かっぽう)」があります。
殺法(さっぽう)は、相手を殺傷するために使用されていましたが、風潮の変化により技はオリンピック競技にもなっている柔道として継承されてきました。
活法(かっぽう)は、負傷者を蘇生や治療していく殺法(さっぽう)とは違う柔術ですが、現在も行われている「ほねつぎ」や「接骨」として伝承されて「柔道整復術」となりました。
柔道整復師はどんな仕事に就職できるの?
整骨院(接骨院)
柔道整復師の仕事で最も多く就職しているのは、整骨院(接骨院)です。基本的には、ケガなどで身体を痛められた方が施術所に来られて施術をしていきます。
仕事内容は、施術スタッフとして患者さんの施術をしたり、問診で症状やお悩みをお聞きしたり、トレーニングやストレッチをしてあげたり指導したりしています。
また、そのほかに施術所のカルテを記入したり、パソコン入力をしたり事務作業もあります。
施術所によっては、受付スタッフとして受付業務を行う場合もあります。
お会計をしたり、受付で患者さん対応をしたり、施術所の機械の操作をしたりすることもあると思います。
よく整骨院と接骨院の違いについて、疑問を持たれる方は多いですが、実は名前の付け方が違うだけで、施術内容や設備は特に変わりありません。
法律上、どちらで表記しても問題がないのです。しかし、整骨院(接骨院)と整体院は全然違います。整骨院(接骨院)は柔道整復師が健康保険適用であれば使用して施術を行なっている施術所です。
それに比べて整体院は、民間資格の整体師もしくは何も資格を持っていない人が実費でマッサージをするところです。
しかも、身体のことをあまり勉強していない人がマッサージをする場合もあります。
上記の通り、整骨院(接骨院)は柔道整復師が開業した施術所です。
ケガ(骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷等)で来られた方を応急処置または施術をしていきます。
注意点として、骨折と脱臼の応急処置をした後、継続して施術を行う場合は、医師の同意が必要ですので、医療機関に紹介しなければなりません。
それ以外の施術は症状が改善するまですることができます。
ケガや痛みで困っている患者さんを助ける事ができる、とてもやりがいがある仕事です。
また、来られた患者さんを最初から最後まで携わることができるのも魅力的です。
他の医療施設で勤務する場合では、医師や他の医療従事者と連携して行ないますので、なかなか最後までその患者さんの状態をみることができないことも多いです。
整形外科クリニックや総合病院
柔道整復師の就職先として、整形外科があるクリニックや総合病院があります。整形外科は骨・筋肉・神経・靭帯などの運動器の病気を扱う医療機関です。まず医師の診断や治療の後、だいたいの患者さんはリハビリテーション室にてリハビリを行なっていきます。リハビリテーション室で必要とされるのは理学療法士、そして柔道整復師です。
そこでは、ケガ・身体の痛み・身体の障害がある患者さんがたくさんいらっしゃいます。その方たちに対して、固定やテーピング、マッサージ、運動療法、物理療法を駆使して施術をしていきます。
ここでは、医師の指導のもと施術やリハビリテーションを行うため、自分自身の施術計画やペースで進めていけません。あくまで、助手として患者さんに対応していく形になります。
それから、クリニックや総合病院にはレントゲンやMRI、場所によってはCTなど、さまざまな医療検査機器が設置されています。整骨院(接骨院)には、このような医療検査機器はありませんし、設置することができません。また、クリニックや総合病院は薬の処方も行っています。
この点も整骨院(接骨院)と大きく異なるところです。
介護施設
デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などの介護施設で就職する柔道整復師も増えてきています。
ディサービス(通所介護)とは、半日または1日で入浴介助や食事介助、機能訓練などのリハビリテーション、レクリエーションなどを受けられる介護サービスです。
またショートステイ(短期入所生活介護)とは、要介護の方が数日~1週間ほどの短期で施設に入所する介護サービスです。最長30日まで入所することができます。
柔道整復師の資格は、介護分野で「機能訓練指導員」として施設の利用者さんに機能訓練を行ない、できる限り自立した生活ができるように支援することが認められています。この機能訓練指導員という資格は柔道整復師だけでなく、他の医療資格にも認められています。看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・鍼灸師等です。
その中でも特に柔道整復師は、デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などの介護施設で重宝されています。
骨・筋肉・関節について知識が豊富な為、機能訓練時に行なうストレッチやトレーニング等の体操に関して、色々な指導とアドバイスができるためです。
介護施設での仕事は、ストレッチやトレーニングを教えるのが好きだったり、ゲームやボール遊び等のレクリエーションをしたり考えたりすることが好きな人が向いています。
機能訓練がしっかりできていれば、あまり歩けなかった利用者さんが歩けるようになったり、腕上がりにくかった利用者さんが上がりやすくなったりして、とても身近で改善が感じられる、やりがいがある仕事です。
スポーツトレーナー
スポーツトレーナーとは、スポーツをしている選手を指導したりサポートしたりする仕事です。スポーツトレーナーといっても、選手に対するアプローチによりさまざまな種類があります。
選手が試合や練習をしている時にケガをしてしまった時に対応する「アスレティックトレーナー」、ケガをしてしまった選手に対して早期復帰ができるようにサポートや指導を行う「メディカルトレーナー」、ケガをしている選手またはコンディションを整える選手に対してフィジカル面やメンタル面でもサポートしてあげる「コンディショニングトレーナー」、スポーツジムやフィットネスクラブの利用者に運動指導やサポートを行う「フィットネストレーナー」などがあります。
最近では、パーソナルトレーニングジムというマンツーマントレーニングが流行しています。1対1でトレーニングや身体づくりの指導、サポートを行う「パーソナルトレーナー」という形もあります。
一概にスポーツトレーナーといっても、種類は豊富です。どれもスポーツをしている選手の力になれる、やりがいのある仕事です。
一般企業
近年、一般企業に就職する柔道整復師も増えてきています。
よく目にする就職先が、サポーターやテーピングなどの医療用製品を開発・製作・販売している企業です。
他にも、スポーツ用品店で就職する人もいます。
整骨院(接骨院)やクリニック・総合病院とは、また違う形で痛みに困っているスポーツ選手や会社で働いている方の症状を改善していく仕事です。
柔道整復師ってどんな仕事 ?1日のスケジュールを大公開!
整骨院(接骨院)
朝は、だいたい8時ぐらいに出勤して開院までの準備を行います。開院時間が迫ってくると朝礼を始めて、昨日の申し送り事項などを確認します。
9時頃から開院して患者さんの対応をしていきます。午前診療はおよそ12時までです。12時が過ぎて、患者さんが全員帰られたら、掃除を行い休憩に入ります。休憩時間は長めにとっている場合が多く、2~3時間ほどあり自由に過ごすことができます。
午後診療の開始時間は、だいたい15時です。その時間までに、また準備を行い、患者さんをお迎えしていきます。バタバタと患者さんの対応を行い、20時頃で診療時間が終了します。来院時間や施術時間により、まだ患者さんがおられる場合もあります。患者さんが全員帰られたら、午前診療終わりより、入念に掃除を行い業務終了です。
患者さんのニーズ、都会や地方という立地によって時間は異なる傾向があります。
休日は、日曜日と祝日のところが多いです。平日のどこか1日と土曜日は半日開院していることが多いため、お昼には閉院してお昼過ぎから休めます。休日も患者さんのニーズや、都会や地方などの地域柄によって変えて開院しているところもあります。最近増加しているのは、日曜日と祝日は開院して、平日のどこか1日を閉院しているところです。土日が休みの人をターゲットにしていて、サラリーマンの方々が来やすいような時間帯になっています。
整形外科クリニックや総合病院
上記の整骨院(接骨院)と1日のスケジュールは、あまり大差ありません。朝はだいたい8時ぐらいに出勤、開院準備をします。開院時間までに朝礼をして、昨日の申し送り事項などを確認します。
9時頃に開院したら患者さんの対応をし、およそ12時で午前診療終了です。掃除を行って休憩に入り、だいたい15~17時に午後診療開始です。その時間までに、また準備を行い、患者さんをお迎えしていきます。19時頃で診療時間が終了します。午前診療終わりより、入念に掃除を行い業務終了です。同じく、患者さんのニーズ、都会や地方という立地によって時間は異なる傾向があります。
総合病院でのリハビリスタッフの場合は、個人の医院とは異なりシフト制を採用していることがあります。
休日も整骨院(接骨院)と同様に、日曜日と祝日が多いです。平日のどこか1日と土曜日は半日開院で、お昼には閉院してお昼過ぎから休みに入ります。患者さんのニーズ、地域柄によって休診日を変えて開院しています。
介護施設
だいたい8時に出勤して、その日の準備や内容を確認します。利用者さんを送迎に行く時間がきたら、迎えにいきます。そして9時頃から1人1人の血圧や脈拍などの健康状態をチェックして、機能訓練を行っていきます。
12時なったら昼食をとり、昼からレクリエーションをしていきます。
16時頃からもう一度、健康状態のチェックをしてサービス終了です。
利用者さんを家まで送迎して、業務終了です。
月初めや月末などの、処理する書類が多い場合は、残業になることがあります。
介護施設の一番の魅力は、サラリーマンと同じく夕方5時か6時ぐらいには業務が終了するところです。
やはり整骨院(接骨院)やクリニック・総合病院の場合、どうしても拘束時間が長くなってしまいます。
しかし介護施設の場合は、そこまで拘束時間がありません。それにより、仕事終わりの時間を確保することができます。
休日は、日曜日と他の曜日で1日が多いです。祝日も業務はあることが多いです。特にディサービスは、曜日で参加する利用者さんが決められているため、祝日で休んでしまうと、週の施設利用回数に影響を与えてしまいますので休まないのです。
スポーツトレーナー
チームに所属しているスポーツトレーナーの場合は、練習する日と試合する日で大きく変わってきます。練習を行う場合は、練習前に出勤して、監督やコーチとミーティングを行い練習メニューを決めたり、選手のコンディションの情報交換をしたりしていきます。そして練習が始まると、選手のトレーニングを指導したり、コンディションが悪い選手のケアをしてあげたりします。練習が終わったら、チームによってはリカバリーケアを行っているところもあります。リカバリーケアとは、練習後に次の日に疲れを持ち越さないように、ストレッチやマッサージを行い疲労回復を促す治療です。
その日に試合を行う場合は、ガラッと1日のスケジュールが変わります。試合会場が遠方の場合でも、チームに所属していれば帯同しなければいけません。まず試合前は、選手たちに予防テーピングをしてあげたり、ケガや痛みがある選手には包帯やテーピングなどで痛みが出ないようにケアしてあげたりします。試合中はケガ人が出たら駆けつけて、プレーを継続できるかどうか判断して応急処置をする役割があります。
試合後には、選手たちの疲労をできるだけ残さないようにリカバリーケアをしていきます。また、当日にケガをした選手が翌日が練習や試合ができるかどうか、判断し監督に伝えます。
スポーツジムなどで勤務するスポーツトレーナーは、チームに所属しているスポーツトレーナーと全然違って、シフト制なことが多く、出勤時間もバラバラです。早ければ8時だったり、遅ければ12時だったりします。最近では24時間のフィットネスジムも増えているため、さらに変則的になるかもしれません。出勤したら施設の利用者の方が、安全で正しくトレーニングをしているか見回ったり、バーベルトレーニングや他のトレーニングの補助や指導をしたりしていきます。
休日ですが、チームに所属している場合はチームの休み合わせなければいけません。スポーツジムの場合では、シフト制になりますので月に何回という形で休みを取っていくと思います。
一般企業
企業になりますので、一般的なサラリーマンと同じです。9時から就業開始ですので、8時半頃には出勤して、その日の準備や朝礼を行います。事務作業や営業業務を行い、12時〜13時は休憩しながら17時頃まで業務をしていきます。開発や企画担当であれば、会議や資料作成などを行います。
業務が残ってしまえば残業して、終了すれば帰宅します。
休日は土曜日と日曜日、祝日です。特に、製造や販売する会社は、休みをきっちり取っているところも多いです。ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始もゆっくり休めるでしょう。
まとめ
柔道整復師は、整骨院(接骨院)だけで活躍する資格ではありません。医療業界だけでなく、介護業界、スポーツ業界など幅広い分野で活躍している柔道整復師はたくさんいます。身体を痛めている方を治していきたいのであれば「整骨院(接骨院)や整形外科などの病院」で、加齢により身体機能が低下してしまい歩けなくなってしまった方を歩けるようにしたいのであれば「デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などの介護施設」に就職しましょう。
また、スポーツ選手のパフォーマンスを向上させたり身体のケアをしてあげたい方は「チーム所属のスポーツトレーナー」に、スポーツ選手だけでなく色んな人にトレーニング指導をしたい方は「フィットネスジムなどのスポーツトレーナー」になりましょう。
企画や開発、製造、販売に興味がある場合には「一般企業」を選びましょう。
柔道整復師になって、自分に合った形で仕事をすることが一番やりがいを持ち、楽しく自分らしく仕事を続けられると感じます。