柔道整復師として開業するには、さまざまな難関を突破しなければいけません。ですが、それらの難関を突破して開業できたからと言って、そこで終わりではないのです。本当の厳しさは、開業した後に訪れます。それが集客です。
開業したけれど集客率が悪く、泣く泣く廃業したという柔道整復師も多くいます。それだけ安定した患者様を集めるのは難しいということです。
拝聴の割合や集客方法のポイントなどと合わせて、集客の難しさについてご紹介していきます。
柔道整復師の「集客」と「廃業率」
柔道整復師は開業してもすぐに廃業に追い込まれてしまう病院が多くあります。
通院していたのに、ある日行ってみたら病院がなくなっていたという経験をした方もかなりいるようです。
柔道整復師が廃業に追い込まれる割合はどれくらいなのでしょう。運営の仕方などにも注目してご紹介します。
柔道整復師の廃業率は4%
厚生労働省の発表によると、整骨院の廃業率は年平均4%だそうです。毎年100人の施術師が開業した場合、そのうちの4人は1年以内に廃業しているということになります。
ですが、これはあくまで厚生労働省が発表した数字です。そして、柔道整復師以外の按摩師や鍼灸師も含まれています。整骨院と称して開業している人は柔道整復師だけではありません。柔道整復師としての資格ではなく、鍼灸やマッサージの資格を取得したのち、整骨院として開業している人たちも多くいるのです。
ただ、柔道整復師以外の整骨院の数はかなりたくさんあります。街中を見てみてください。小さな整骨院が隣り合わせや向かい合わせになって開業しているところをよく見るでしょう。
それだけたくさんある整骨院が毎年4%ずつ廃業に追い込まれているのです。これから開業しようと考える人にとっては、この数字は大きいと感じられるでしょう。
2018年は過去最多の廃業率
厚生労働省発表の整骨院廃業率は4%ですが、実際に廃業する病院は年々増えています。過去最多と言われているのが2018年で、前年比に比べて約36%も増加しました。
仮に2017年に廃業した整骨院が4件だった場合、翌年の2018年は36件に跳ね上がったということです。パーセンテージだけでみると大したことがないように感じられるかもしれませんが、実際の件数に置き換えて考えてみると、廃業した整骨院の数が爆発的に増えていることがわかります。
それだけ、経営難に陥っている整骨院が多いということです。ここにはマッサージ師や鍼灸師も含まれていますが、柔道整復師も当然含まれています。「他の人の話だから、柔道整復師の自分には関係ない」では済まされないのです。
廃業の多くは個人院
廃業した整骨院の中で最も多くの割合を占めているのが個人病院です。これは、整骨院の中で個人病院として運営している割合が多いということも理由の一つでしょう。ですが、それ以外にも廃業率が高くなる理由があります。
それは、情報共有ができないという点です。整骨院はその多くがライバルとなってしまいます。ライバル視している人に自分が知っている有益な情報を教えようという人は少ないでしょう。すると、情報の共有ができなくなり、結果的に廃業に追い込まれてしまうのです。
わかりやすい例を挙げると、個人で運営されている整骨院が隣り合わせに2軒あったとします。整骨院のそれぞれがもし、まったく別の施術を行なっていたらどうでしょうか。保険治療の場合は制限がありますが、実費の場合は整骨院をはしごしても問題にはなりません。まったく別の施術を行なっていた場合は、住み分けだけではなく、互いに協力し合うことで更なる固定患者様を集めるというメリットもあります。
また、一つの整骨院ですべての患者様のニーズに応えた施術を行なうことは不可能です。情報共有がされていれば、施術内容が被ることはありませんから、潰し合いにはなりません。
ですが、実際にはこのようなことは行なわれていません。それぞれが自分の利益の為だけに運営していますから潰し合いになり、結果的に廃業してしまうケースが多いのです。
廃業の原因は集客の難しさにある?
柔道整復師が廃業する例はたくさんあります。それだけ廃業に追い込まれてしまう人が多いということですが、その大きな理由となっているのが集客です。
せっかく開業しても集客できず、赤字経営が続いて廃業になってしまう柔道整復師が多いのです。
ではなぜ柔道整復師として開業した後、集客が難しくなるのでしょう。その理由についてご紹介します。
整骨院は飽和状態
現在、整骨院は飽和状態にあります。整骨院を必要としている人たちに比べて、整骨院の数が圧倒的に多いのです。
駅前などを見てみてください。小さな整骨院がいくつも立ち並んでいるでしょう。大都会ならまだしも、都会ではない場所でも急行が止まる駅前などには、小さな整骨院が多数立ち並んでいるという光景をよく目にします。今やコンビニエンスストアよりも整骨院や接骨院は増えているのです。
整骨院は開業する為の資金が、他の仕事を始める場合よりも安いという特徴があります。柔道整復師が開業する為に必要な準備資金は約1,000万円と言われています。ですが、整骨院以外の仕事で開業しようとすると、もっとお金がかかるというのが現状です。
このような理由から、整骨院を開業する人たちが増えてしまい、必要としている人たちよりも数が多くなってしまっているという現状があります。飽和状態になれば、当然患者様の取り合いになりますから、その戦いに敗れた整骨院はどんどん廃業してしまうのです。
現在でも柔道整復師は増加傾向
整骨院は飽和状態にありますが、実際は柔道整復師などが開業する割合が増加傾向にあります。そこには、柔道整復師が開業するにあたっての法律などが改定されたという背景があります。
2018年4月から、柔道整復師が開業するにあたり、管理施術者という資格が設けられました。管理施術者としての資格を取得するには、最大3年の実務経験と16時間以上2日間の検収を受ける必要があります。この2つの条件をクリアすることで、管理施術者としての資格が与えられます。管理施術者になると、保険請求での施術が可能になります。実費ではなく、堂々と「保険治療可」を標榜して施術を行なうことができるのです。
これは言い換えるなら、保険請求内の施術に制限が設けられたことになります。「保険請求内での施術が可能」ということに付加価値がつく為、「管理施術者としての資格を持っておけば廃業に追い込まれることはないだろう」と考えた人が多くいたのです。
また、保険請求をしない運営方法を取ろうとしている人たちにも門戸が開きました。実際、実費のみの施術を行なっている整骨院も数多く存在しています。そのようなところは、独自の施術方法を前面に打ち出して宣伝することができるわけです。
このように保険請求内での治療を行なう柔道整復師と、実費のみの施術を行なう柔道整復師の住み分けが明確になったので、柔道整復師が開業する割合は増加傾向にあります。
他の院との差別化が重要
柔道整復師が開業後に集客する為には、特殊な施術を行なうという方針を取らなければ難しいという現状があります。
実際、開業した柔道整復師の中には、エアロビやヨガを取り入れた運動方法を提供しているところもあります。悪いところ施術して痛みを取り除くだけではなく、それ以上悪い部分が悪化しないように、また自分の治癒力で悪い部分を治すことができるように、具体的な方法提供しているのです。
本格的なエアロビやヨガではなく、簡単な柔軟体操や仕事中にも座ったままでできる凝りをほぐす運動などを提供している柔道整体師も多くいて、それが集客につながっているというケースが多く見られます。
他の整骨院では提供していないような施術やサービスを提供することで独自のカラーを出し、集客率を上げて行かないと固定患者がついてくれないという現状があるのです。
ですが、これにはアイデアや発想の転換が必要です。そのようなことが得意な人たちばかりではないでしょう。柔道整復師として努力を続けてきた人が、突然開業して独自のカラーを打ち出すような画期的なサービスを思いつく、ということはほとんどありません。
結果、施術内容が他の病院と同じようなものになってしまい、集客率が上がらずに廃業することになる、というパターンをたどってしまうのです。
ニーズに合った施術を取り入れる必要あり
整骨院や治療院で集客するためには、患者のニーズに合った施術を取り入れる必要もあります。
例えば、ご年配が多い場所に開業した場合、エアロビなどのような激しい運動を取り入れた施術を提供しても喜ばれることはあまりないでしょう。痛みを取り除く治療をしてもらう為に行ったのに、激しい運動をさせられて悪化したなんてことにもなりかねません。
反対に若い人たちが多く集まるような場所で、マッサージだけ提供しても集客率は上がりません。そのような施術を行なっているところは他にもたくさんあるからです。よほど柔道整復師の腕が良くなければ、多くの固定患者様がつくということはありません。
このように、開業した場所のニーズに合った施術を取り入れる必要があります。そのニーズにずれてしまうと固定患者がつかないばかりか、「あそこの整骨院は良くない」という悪うい口コミが広がってしまう可能性も高くなります。しっかりリサーチを行ない、通院する人たちのニーズに合った施術やサービスを提供することが集客率アップにつながるのです。
ですが、これは一長一短でできるようなものではありません。開業したばかりの時は、どのような人が通院してくれるのか全く分からない状態です。一番最初に訪れてくれた患者様のニーズに自分の施術方法が合えば、そこから口コミで広がることもあるでしょう。ですが、そのような奇跡はめったに起こりません。そして、ニーズに合った施術やサービスを提供するには、かなりの時間がかかるのです。
その必要な時間の間に、運営が苦しくなり、廃業してしまうというパターンが多くなります。いかに早い段階で必要とされているサービスを提供できるかが鍵ですが、実際にはとても難しいことなのです。
柔道整復師がやるべき3つの集客方法
柔道整復師が開業するにあたって、基本的な集客方法があります。まずはこの基本的な集客方法を使って病院を宣伝し、患者様を呼び込みましょう。
HP、チラシ、SNSを使った方法をそれぞれご紹介しますので、参考にしてみください。
HPを使った集客方法
柔道整復師は自分の病院を宣伝するにあたって、HPを開設するというパターンが多くあります。HPを開設すれば、それを利用して予約管理を行なうこともできるからです。
❖ メリット
他の病院と差別化することができます。自分の病院のカラーを前面に打ち出すことで、他院にはない印象を与えることが可能です。「ホームページが可愛かったので来てみました」という人も出てくるでしょう。
また、HPにカウンターやアクセス解析を設置しておけば、数値化することができます。HPを訪れた人が最もよく見ているページはどこなのか、HPのアクセス数と来院数にはどれくらいの広がりがあるのか、等が明確にわかり、それを運営に繁栄することができます。
❖ デメリット
HPを作成するのは、簡単ではありません。趣味で作ったHPなら作成は簡単です。ですが、商売につなげる為のHPを作成する場合にはそれだけの技術や知識が必要です。外注という方法もありますが、当然お金がかかります。HPを維持する為の維持費も必要ですし、定期的にメンテナンスをする必要もあります。これらのことを考慮に入れなければなりません。
また、HPを作成してからそれが実際の集客に反映されるまでには、かなりの時間がかかります。昨日今日作ったHPをすぐにたくさんの人たちが見てくれる、というわけではないのです。来訪者の中に「この病院のHPは良さそうな雰囲気がある」と感じると、自分のHPやブログで宣伝してくれるでしょう。そのような輪がゆっくり広がって集客につながります。即効性がないという点では大きなデメリットです。
チラシを使った集客方法
チラシを使った集客方法もあります。開業したばかりの柔道整復師は、HPなどで自分の病院を宣伝すると共に、チラシを使った宣伝方法も取り入れています。
❖ メリット
直接自分の病院を宣伝できます。チラシはその人に直接届けられますから、多くの人たちの目に留まり、必要としている人たちのもとに自分の病院の情報が直接届くのです。直接届けば興味をもつ人たちが増え、それが集客率につながります。
❖ デメリット
実は、チラシは反響率が低いというデメリットがあります。全国で見た場合のチラシによる反響率は、平均0.7%だそうです。チラシを多くばらまいたからと言って、それがすぐ集客率につながるというわけではありません。根気と粘り強さが必要で、資金面でもかなり多くの出費が予想されます。
SNSを使った集客方法
最近では、SNSを使った方法で集客率を高める柔道整復師も多くいます。SNSの種類も豊富ですし、利用者も多いということもあって、それが集客率につながると考えたからです。ですが、これにもメリットとデメリットがあります。
❖ メリット
HPを作成するよりも簡単に解説できます。基本的な形はすでに用意されているので、後は情報を入力していけば、自分のページが簡単に作成できるというのは最大のメリットと言えるでしょう。専門的な知識が必要ないという点も大きいと言えます。
課金をすれば、プロモーションとして近い距離にいる人や年齢層があっている方に広告を出してくれるサービスもあるのもメリットの一つです。
❖ デメリット
気づいてもらいにくいというのが、最大のデメリットになります。SNSを開設したからと言って、それで多くの人たちが見てくれるわけではありません。また、SNS上には整骨院のページもたくさんありますから、いかに自分が開設したページを多くの人たちに見てもらうかという努力が必要です。実際にSNSを使った集客方法が集客率につながっているかは謎だという意見も多数あります。
これはダメ!柔道整復師のNGな集客手段
柔道整復師が開業するにあたって、自分の病院を宣伝しようとあらゆる手段を講じます。
ですが、その中には絶対にやってはいけないNGな集客方法があります。知らないでその方法を使ってしまうと、廃業に追い込まれる危険性があるのです。
そんなNGな集客手段についてご説明します。
施術者の経歴を前面に出す
柔道整復師が集客率を上げようとするとき、施術者の経歴を前面に出すことは禁止とされています。これは国が定めている医療類似行為という法律の中で規制されているからです。
自分の病院を宣伝する際、自身の経歴はもちろん、出身校の掲載も認められていません。これは法律に触れますから、充分注意してください。
具体的な症状名を挙げる
集客率を上げる為に宣伝する場合、他院との違いを主張しようとして具体的な症状名を挙げてその結果を載せたりすることがあるかもしれません。ですが、これもNG行為です。
これも経歴と同じく、医療類似行為の法律で規制されています。特にチラシや雑誌などに広告を載せる際には、具体的な症状名を挙げた例を掲載すると法律で罰せられます。注意しましょう。
施術内容を写真で説明
チラシや広告に掲載する時、写真を使いたいと思う人もいるでしょう。ですが、施術内容を写真で説明するようなものはNGです。
これも医療類似行為の法律で禁止されているからです。特に医療器具を使って施術を行なっている写真は、かなり厳しく罰せられる可能性があります。
まとめ
柔道整復師として開業する人は、実は年々増加傾向にあります。ですが、その反面、廃業してしまう病院も後を絶ちません。
開業したのなら、できればずっと続けたいとは誰もが思うことです。その為に必要なのは集客率を上げることですから、どのようにして集客率を上げるのか、自分なりの方法を模索しましょう。