柔道整復師資格を取得したらあとは開業するだけ!
そう思っていませんか?
柔道整復師が独立・開業をするためには、実務経験や研修・講習が大切です。
今回は、必要な実務経験の期間や内容、その他必要書類についてみていきましょう。
この記事をみれば開業に必要な情報やものが揃います。
柔道整復師の独立開業には実務経験と研修が必要
結論から言うと、
柔道整復師が独立開業するためには「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」になる必要があります。そのために必要なものが、「実務経験と施術管理者研修」です。
おおまかな流れとして、
学校卒業
↓
接骨院・整骨院で実務経験を積む
↓
研修を受ける
↓
開業
という流れになります。
実務経験とは?
「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」がいる接骨院・整骨院にて柔道整復師の資格取得後に雇用契約を結んでいた期間のことです。受領委任を取扱っている施術所で実際に学ぶこと
施術管理者研修とは?
近年、柔道整復療養費の不正請求が問題になりました。受領委任の取扱いに当たり、何が保険請求の対象かの判断や施術録、支給申請書の記載の仕方など、制度の正しい理解をすることで施術管理者として適切に保険請求を行うとともに質の高い施術を提供できるようにすることを目的としています。
(1)職業倫理について
(2)適切な保険請求
(3)適切な施術所管理
(4)安全な臨床
この4つの内容を学びます。
・施術管理者研修の研修時間はどのくらい?
2日間程度で16時間以上となっています。
なぜ実務経験が必要なの?
接骨院・整骨院を開業するためには「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」にならないといけないので、この施術管理者になるためには一定期間の実務経験が必要なのです。
例えば、お医者さんは医師免許取得後研修医として2年間初期臨床研修を受けることが法律で義務づけられています。この初期臨床研修を終了すると、臨床行為を行うことや開業することが可能となります。医療以外の資格でも管理理容師・管理美容師になるためには、免許を取得 後理美容の業務に3年以上従事することが要件とされています。
このように柔道整復師は保険診療ができる資格であるゆえにしっかりとした経験が必要ということになります。
実務経験はどのくらいの年数が必要なの?
「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」になるには必要な経験年数があります。
柔道整復師を管轄する厚生労働省の説明にはこのように説明されています。
1 施術管理者の要件としての実務経験について
「柔道整復師の施術に係る療養費について」(平成 22 年5月 24 日付け保発 0524 第
2号。以下「受領委任通知」という。)別添1別紙及び別添2のそれぞれの第1章5に
規定する「柔道整復師として実務に従事した経験」は、受領委任の取扱いを行うとし
て登録された施術所(以下「登録施術所」という。)において、柔道整復師として実務
に従事した経験(以下「柔道整復師実務経験」という。)であること。
2 施術管理者の要件としての柔道整復師実務経験の期間
施術管理者の要件としての柔道整復師実務経験の期間は、次の事項の全てを満たす
ものとすること。
(1)柔道整復師の資格取得後の期間とすること。
(2)登録施術所の雇用契約期間とすること。
(3)受領委任通知別添1別紙第2章9の受領委任の届け出又は別添2第2章9の
受領委任の申し出に必要となる柔道整復師実務経験の期間は、1年とすること。”出典元:柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について
簡単にまとめると、
- 柔道整復師としての実務経験は、「受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所」にて1年以上の柔道整復師実務経験が必要
- プラス既定の研修(2日間で16時間)を受けること
が要件となってます。
噂では数年後に実務経験の年数が2年、3年と増えていくという可能性もあります。
ー追記ー
平成30年4月から令和4年3月までに届出する場合→1年間の実務経験
令和4年4月から令和6年3月までに届出する場合→2年間の実務経験
令和6年4月以降に届出する場合 →3年間の実務経験
令和4年3月までに届出をする方は1年間の実務経験で大丈夫です。2020年は令和2年なのでまだ実務を開始していない方は早めに実務を始めましょう。
ルール上1年間の実務経験で開業ができるようになりますが、実際には学校を卒業して1年間接骨院で働いただけでは臨床での経験不足かなと感じます。実際に開業される方の多くは接骨院で3~5年程度経験を積んでから開業される方が多いと感じます。ですが、1年間の実務経験だけでも開業できるので、すぐに開業したい方はご安心ください。
実務経験の証明には書類が必要!
1年間、実務経験を積んでも、証明できる書類がなければ基本的に開業はできません。
ここからは、厚生労働省で定められた、実務経験の証明方法についてみていきましょう。
実務経験の証明はどうやるの?
厚生労働省の説明にはこのように説明されています。
3 柔道整復師実務経験の期間の証明方法
柔道整復師実務経験の期間の証明方法は、次の事項の全てを満たす方法とすること。
(1)柔道整復師実務経験の期間の証明は、別紙様式1の実務経験期間証明書によ
り取扱うものとすること。
(2)実務経験期間証明書は、柔道整復師が実務に従事した登録施術所の管理者(開
設者又は施術管理者)による証明とすること。
(3)地方厚生(支)局において登録されている勤務する柔道整復師の情報は、2
による柔道整復師実務経験の期間を確認するものとして使用すること。
4 登録施術所の管理者における柔道整復師実務経験の期間の証明
登録施術所の管理者は、以下に示す柔道整復師実務経験の期間を証明するものとす
ること。
(1)登録施術所の管理者は、実務経験期間の証明を求められた場合、当該柔道整復師にかかる雇用契約期間を確認したうえで、別紙様式1の実務経験期間証明書の必要欄を記入、押印した後、手交すること。
簡単にまとめると、
「1年間実務経験を積んだ施術所の管理者に実務経験期間証明書に雇用契約期間(実務経験期間)を書いてもらう。」ということです。
他にも書類が必要!
開業に必要な書類は、施術所の管理者に実務経験期間証明書以外にも、6つ指定されています。(例外として7~8つ提出する場合もあります。)
項目 | 備考 |
①確約書(様式第1号) | 各地方厚生局ホームページからダウンロード |
②柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(様式第2号) | |
③実務経験期間証明書の写し | 実務経験を積んだ施術所の管理者に雇用契約期間(実務経験期間)を書いてもらう |
④柔道整復師の免許証の写し | |
⑤施術管理者研修修了証の写し | |
⑥施術所開設届・変更届の写し | 保健所、厚生局への提出。保健所で相談も可能 |
(⑦施術管理者選任証明) | 開設者と施術管理者が違う場合に提出 |
(⑧柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(同意書)) | 施術管理者以外に柔道整復師がいる場合に提出 |
「⑥施術所開設届・変更届の写し」については他の書類とは異なる手続きをするため、詳しく解説します。
開設届・変更届の写しを厚生局に提出する前に、まずは各市区町村の保健所に提出します。
開設届・変更届を保健所に提出する流れ
事前相談 :構造設備や添付書類、開設の日程、広告などについてあらかじめ保健所に相談します。
↓
開設:施設が整い、施術を開始できる状態にします 。
↓
開設届:開設後10日以内に保健所の窓口に届けます。
↓
検査:保健所の監視員が施設の検査をします。
↓
副本の交付:開設届の副本をもらいます。
開設届・変更届は各市区町村の保健所のHPからダウンロードできます。
開設届・変更届と一緒に添付する書類一覧
・業務に従事する施術者の免許証の写し
・身分証明書の写し
・施術所の平面図
・施術所への案内図
・登記事項証明書(開設者が法人の場合)
保健所から開設届・変更届の交付をしてもらった後に写しを厚生局に提出します。
書類はどこで入手するの?
前述した必要書類のなかで、5つは各地方厚生局HPからダウンロードできます。
・確約書(様式第1号)
・柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(様式第2号)
・実務経験期間証明書の写し
・施術管理者選任証明(開設者と施術管理者が違う場合)
・柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(施術管理者以外に柔道整復師がいる場合)
各地方厚生局 | 都道府県 |
北海道厚生局 | 北海道 |
東北厚生局 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
関東信越厚生局 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県 |
東海北陸厚生局 | 富山県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
近畿厚生局 | 福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
中国四国厚生局 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
四国厚生支局 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
九州厚生局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
書類提出の流れ
国家試験に合格し、柔道整復師になる
↓
1年以上実務経験をする
↓
1年間勤務した施術所の管理者から実務経験期間証明書を書いてもらう
↓
施術所を開設して保健所に開設届を提出し副本(写し)をもらう
↓
6つの書類を提出する
①確約書
②柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出
③実務経験期間証明書の写し
④柔道整復師の免許証の写し
⑤施術管理者研修修了証の写し
⑥施術所開設届・変更届の写し
実務経験なしで独立開業した場合は?
ここまで「柔道整復師の独立には実務経験とそれを証明する書類が必要」ということをご紹介してきましたが、実は、実務経験がなくても独立開業自体は可能です。
しかし、実務経験なしで独立開業すると、大きなデメリットを被ることも…。
ここからは、実務経験なしで独立する方法や、デメリットをみていきましょう。
柔道整復師の資格と場所があれば接骨院・整骨院を開業はできる!?
未経験であっても、柔道整復師の資格と”規定をクリアした場所”があれば各市区町村の保健所に開設届を提出して開業できます。
場所の規定は以下の4つです。
1. 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有する。
2. 3.3平方メートル以上の待合室を有する。
3. 施術室は、室面積の1/7以上に相当する部分を外気に開放すること。(これに替わる換気装置を設けること。
4. 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を設置すること。
これらの条件をクリアすることで、実務経験なしでも独立開業は可能なのです。
デメリット
受領委任払いができない
実務経験と研修を受けていると「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」になれます。この施術管理者になると受領委任払いができる接骨院を開業できるようになります。
ー受領委任払いとは?ー
療養費は、本来、患者さんが費用の全額を支払った後、自ら保険者へ請求を行い支給を受けるのが原則(償還払い)ですが、柔道整復については、例外的な取扱いとして、患者さんが一部負担分を柔道整復師に支払い、柔道整復師が残りの費用を保険者に請求する「受領委任払い制度」という方法が特別に認められています。このため、多くの整骨院・接骨院などの窓口では、病院・診療所にかかったときと同じように自己負担分のみ支払うことにより、施術(治療)を受けることができます。この受領委任払い制度の適用には、療養費の支給申請書の受取代理人欄に、委任の署名(サイン)が初検時、月ごとに必要となります。
簡単にまとめると、
本来は患者さんの手続きが面倒な償還払いという方法をとらないといけないのですが、
「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」になると患者さんに負担がかからない受領委任払いができるようになるのです。
償還払いは患者さん先に全額払い、そのあとに患者さん自身が保険者療養費をに請求します。
受領委任払いは、患者さんが負担する金額は1~3割のみ。残りの療養費は整骨院が保険者に請求します。
「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者」になっていなければ毎回償還払いの接骨院になってしまいます。
卒業したらすぐに開業できると思ってたのに…
接骨院・整骨院を開業してやっていくには受領委任払いができたほうが当然有利です。
しかし、最近は柔道整復師の資格を持ち、さらに施術管理者でありながらも自費診療をで営業される整骨院や整体院に看板を変えるところが増えてきました。話を聞くと自費診療だけでもうまくやっているところも少なくないです。
受領委任払いができないのはデメリットでありながらも、逆にあえてその制度を使わずに上手くいっている院もありますので、資格取得してすぐに開業されたい方はご参考程度に…。
まとめ
・柔道整復師の開業には実務経験と施術管理者研修が必要
実務経験の期間は1年間
実務経験を証明する書類が必要
施術管理者研修の期間は2日間程度で16時間以上受講
・提出する書類がたくさんある
通常は6つの書類を提出する
開設者と施術管理者が異なる場合は書類が8つになる
・実務経験が無くても独立開業はできる
受領委任払いができないので、めんどくさい償還払いか自費診療しかできない
しかし、自費診療だけでも上手くやっている院はけっこうある